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第69話
もう、ヤダ・・・・・
二人とも、バスを降りてから家までの間、ずっと黙ったまま歩いていた。
僕が友田さんに話しかけても答えてくれなくて..........。
怒ってるのかな?・・・なんか気に障る事言ったっけ?!
僕も、段々気が滅入ってきたから、話しかけないまま家のカギを開けて中へ入った。
靴を脱いで無言のままリビングへ行く。それからテーブルの上に荷物を置いて友田さんを見る。
後からついてきた友田さんは、ソファーの上に書店の袋を置くと、ダウンジャケットを脱いだ僕の肩を掴んできた。
「ごめ、ん。・・・俺、なんか、スゲーちっさい男だ。」
急に眉を下げると言ってきて、意味が分からない僕はじっと顔を見つめたまま動けないでいた。
「どうか、したんですか?小さい男って............どういう意味なんだか............。」
僕は、肩に置いた友田さんの手に自分の指先を当てて聞いてみた。
「なんか、あの子と楽しそうにしゃべってるの見て、複雑な気持ちになった。」
「あの子、って桃里くん?・・・本屋で見てたの?」
たまたま同じ本屋に居たんだし、声をかけてくれたらよかったのに、と思った。
別に楽しそうに、と言われることは何もないけど、友田さんからは僕たちが楽しく話しているように見えたんだろう。でも、それで気を悪くするなんて・・・・・
「桃里くんは最近クラスに行けなくなって、自分で勉強進めるのが不安になったんだと思う。それで、参考書の相談されてたんです。だから色々聞いてただけで・・・楽しい話なんてしてないんだけど。」
ちょっとだけ僕が口を尖らせて言うと、
「アユムは俺のもんだろ?俺だけの・・・・!!」
「え、あ?・・え?」
体をギュっと抱きしめて言われたからビックリする。
「あの子と話してるアユムって、すごく輝いてて、俺が見た事ない顔してた。」
「え、・・・・そんなの・・・・」
言いかけて辞めた。
僕は友田さんといる時がすごく幸せで、安心していられるのに、友田さんにはそれが伝わっていないのか。僕はどんな顔で友田さんと接しているんだろう・・・・。
「アユム・・・」
名前を呼ぶと、僕の顎に手をやりキスをしてくる。
「・・・・」
僕は、目を閉じるとそのままじっとしていた。
あんなに触れたいと思っていたのに、どういうわけか気持ちが踊らない。
僕、どんな顔をしたらいいんだろう..................。
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