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第70話 *

.............ム.......ン、............ン......チュ、 急に灯が点いたように、ソファーに座るとシャツごとセーターをたくしあげ、横たわった僕の胸に舌を這わせる友田さん。 頭の片隅では、何か変だと感じながらも、触れられたところは久々の快感で、ゾクゾクと僕の肌は粟立つ。 「ん........」 乳首の先を舌でつつかれると、喉の奥から小さな息が漏れる。これが、僕の欲しかったものなのかは分からないけど、2度目の僕たちの行為は、この前よりもスムーズだった。 それでも、ソファーを汚さない様にバスタオルを敷いたり、潤滑液の代わりに傷薬を使ったりして、時々素に戻ると恥ずかしさが込みあげてくる。 「いい?・・・痛かったら言って?!」 「う、ん・・・・・」 ゆっくり奥へ入ってくるのを感じると、圧迫感があって息を止めてしまう。 「アユ......ム........息、吐いて........」 ..............フ......ウ................ウ........ン........ 友田さんは、僕に気を使いながらゆっくり進めてくる。時々じっとしては頃合いを図る様に、僕を傷つけないようにしてくれた。 すごく嬉しいのに、繋がった僕たちは幸せな筈なのに、今日の僕は気持ちが中途半端な感じで、自分が友田さんにどんな顔を向けているんだろうと、気になって仕方がなかった。 「お腹減ったな・・・」 ぽつりと呟く友田さんは、ソファーに背中を預けて、床に座ったままの僕を抱き起すと言った。 蒸しタオルで身体を拭かれ、スウェットの上下に着替えさせられ、僕は小さい子供の様に身を任せっぱなしだった。それが友田さんのせいであっても、少しぐらいは動けるものを敢えてそうしていたのは、ずっと腑に落ちない事が僕の頭の中を巡っていたから。 「パスタあるし、ナスと鶏肉もあるし・・・・トマトピューレもあるじゃん!!」 冷蔵庫を開けると嬉しそうに言うから、僕は立ち上がるとキッチンの棚からオリーブオイルを出した。 「鷹の爪”とかあったらいいんだけどな。」 「あります」 「お、そうしたらアユムはパスタ茹でて。俺がソース作るからさ。」 「う、ん。」 重い身体を屈めて深い鍋を取り出すと、水を張る僕の隣で、友田さんがナスを切り始める。 お母さんがいないから、完全に二人っきりで好きなように出来て、おままごとの様に顔を突き合わせてスパゲッティーを食べた。ちょっとした新婚さんっぽくて、僕はひとりで、ふふ、っと笑ってしまう。 「なあ、あの子と待ち合わせしてたの?えっと・・・桃里くん、だっけ。」 食べ終わった自分のお皿を持ち上げると、僕のコップにお茶を入れながら聞いてくる。 「え?・・・うん、桃里くんは稲田駅の2コ先に住んでるんだって。だからイナダのホームで待ってた。・・・どうして?」 今頃そんな話を出されて不思議に思った。友田さんは、食器を流しに置いてからこちらを見ると、はぁ、っと息を吐いて情けない顔をする。 「アユム・・・お前は俺のもんって言ったろ?!なんで他の男とデートみたいな事するんだよ!」 「デ、・・・・エト??」 全く言われている意味が分からない。僕が桃里くんの参考書を選んであげることがデートって・・・・・全然違うのに。 「そういうのって、付き合ってる人同士がするものでしょ?僕は桃里くんと付き合ってないし・・・・友田さんとだってした事ないのに・・・・・」 と、言った後から後悔する。僕が友田さんとデートできないことを根に持っているみたいないい方だったと........。 「それに、桃里くんは中学2年生ですよ?ましてや男同士のそういうのは・・・・カレは普通に勉強の事が心配そうだったし・・・・」 「それは、アユムがそう思ってるだけで、カレはお前の顔ばっかり見てたよ?!参考書の方なんか見てないでさ!」 友田さんにそう言われると、なんだか変な感じがする。あの本屋で、僕らの様子を伺っていたんだという事を知らせているようなものだ。 「友田さん・・・・一体いつから僕らの事見てたの? 声かけてくれればいいのに。」 「かけられるか! アユムがニコニコしながらしゃべってるってのに・・・だから複雑な気持ちになったって言ったろ!?」 「・・・・・・・・・」 「友田さん、これからどうしますか?帰るんなら仕度しないと、バスの時間が・・・」 僕は、もうこの話は終わりにしようと思って聞いてみた。桃里くんの事を僕たちがどうこう言ったって、本人じゃないし、もちろん友田さんの複雑な気持ちっていうのも、僕には分からなくて........。 「泊ってもいい?」 少しはにかんで首を傾げながら聞いてくるけど、こういう所は、年上なのにカワイイと思ってしまう。 「うん。いいけど・・・・」 僕もちょっとだけはにかんで言った。 その晩は、同じ布団に入ると抱き合って寝たが、僕は友田さんの胸に顔を埋めて、心臓の音を聞いているうちに睡魔に襲われてしまった。耳の奥で綺麗なリズムが響いてくると、僕の背中には羽が生えたような気分になって、心も体も天高く飛んでいるようだった。

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