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第80話 *
「桃里くん.............僕は、」
つい、友田さんとの事を言ってしまいそうになる。
僕が好きなのは友田さんなんだ。他の誰にも惹かれない。僕は、もうずっと前から友田さんに惹かれていたんだ。
でも、それを桃里くんに伝えるのは...............。
「ボクが佐々木先輩を好きじゃダメですか?」
桃里くんはストレートに聞いてくる。
そういう所が羨ましくもあるんだけど、それとこれとは別で、僕はキミの気持ちには答えられないと思うんだ。でも、それを言葉には出来なくて.............。
「有難いと思う、でも・・・・ゴメン。」
今は、こういうのが精一杯。
「わかりました。僕が勝手に見ているのはいいですか?佐々木先輩に迷惑はかけませんから・・・ダメですか?」
じっと僕の目を見て言うからドキリとする。
年下なのに、僕より男らしい。どうしてそんなに堂々としていられるんだろう・・・。
僕はそんな風に堂々と自分の気持ちを向けられなかった。こんなに友田さんを好きだってのに。今でもどこか遠慮があるっていうか・・・・本当は、今夜だって一緒にいてほしい。バイトを休んで僕とここで過ごしてほしかった。・・・でも、それを言えない。
「ごめん。桃里くんには可愛い女の子が似合ってるよ。・・・さっきの・・・あの子は彼女じゃないの?そんな風に見えたけど・・・」
さっき電車で見た娘の話をするが、桃里くんはそれには無表情で、
「逃げないで下さいよ。そんな別の娘の話なんか持ち出して............。
ボクは佐々木先輩の事が好きなんです。あの子はただの幼馴染で、友達へのプレゼントを選ぶのに今日だけ付き合ったんです。彼女なんかじゃない。」
怒っているのか、僕の布団の上で、拳をギュっと握りしめる。
「.........そう.........。けど、やっぱり僕なんかよりは、」
「ツ....センパイ!!」
言葉を遮る様に、僕の身体をベッドに押し倒すと、腕を掴んでくる。
両腕を取られて唖然としながらも、ベッドから落とした足をバタつかせた。
十字架に貼り付けられたように動けないでいると、桃里くんの顔が僕に近寄って来るから慌てて、横を向く。今日は顔が動かせるから、絶対にキスはさせない。
「センパイ・・・・」
力ない声が、僕の胸の上で聞こえる。ふと目を落とすと、チラリと目が合った。
「あ.........」
桃里くんの舌先が、僕の服の上から乳首の辺りを探る。
「や、・・・ヤダ・・・やめて!!」
僕は更に足をバタつかせるが、掴まれた腕が緩むことは無くて、その場所を探り当てると執拗に舐めてくる。蠢く舌に、意識が持っていかれそうになって
「と、桃里、くんッ!!」
名前を強く言ってみたけど、そうされる快感を知っている僕は、それ以上声にはならなかった。
どうしよう.....................や............ン.............
ゾクゾクッと胸に電流が走る。この間友田さんに舐められて、ものすごく感じてしまったから、直にではないけど、同じようにされると身体が反応してしまう。
こんなのは嫌なのに・・・・・・どうして・・・・?
- 友田、さん......................。
心の中で名前を呼ぶけど、その声が届くことは無かった。
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