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第81話 *
僕の中で、蠢くモノを感じながら、目尻から溢れる涙を拭う。
顔の前で腕を交差して、唇だけは許さないと抵抗をしてみるが、桃里くんは僕を貫き徐々に律動を始めた。
...苦しい……
…苦しい……
「先輩………泣かないで…。先輩が、悪いんです……ボクを怒らせる、から!」
桃里くんが僕の腕を捕って、顔を見ながら言った。
「見てるだけでもいいと思ってたのに……。
あんな女の子と、くっ........、つけようとするから!」
- - - ズンッ
「…ン……」
強く突かれて、おもわず息が漏れる。
「センパイ、可愛い.........もっと、声聞かせて………ぁ…ァ……ウウ.....ン」
....はツ.......はツ.......は....ぁ......
桃里くんが喘ぎ出して、もうすぐ終るんだと思った。もう少しの我慢………。
僕は、なるべく意識を逸らせて、この場をやり過ごそうとした。
…ハ……ァ……ァ…
バスンツツ - - -
ベッドのスプリングを大きく揺らし、僕の横に身体を投げ出した桃里くんは、余韻を味わうように目を瞑って深呼吸した。
「先輩………ごめんね?」
落ちついたのか、そう言われて僕は隣の桃里くんを見る。うっすらと額には汗が光り、いつもの子どもっぽい目になっていた。
「あの人とも、………」
言いかけて言葉につまり、桃里くんはしばらく黙っているが、彼が何を言おうとしているのか分かった。
僕が友田さんと関係をもったのか聞きたいんだろう。
言ったらどうなる?
それを確かめてどうするんだ?
僕は黙っていた。正直怖くなってしまったから………。
「すみませんでした。…でも、佐々木先輩の事が好きだから、ボクを見てほしい。」
「………見る?………こんなことしなくたって、僕は桃里くんを後輩として見ていたよ?
まっすぐな子だと思って羨ましくもあった。.......なのに............」
「嫌いになった?ボクの事・・・」
肘をついて半身を起こすと、僕の顔に近づいて言った。
僕はすぐに顔をそむける。
「ハ、・・・はは・・先輩、キスはしたくないんですね、どうして?」
僕の首筋を指でなぞりながら聞いてくる。
- 今日、友田さんとキスをした。
ほんの短い間でも、僕には夢の様なひと時だったんだ。場所は・・・まあ、仕方ないとして・・・・・
その感触だけは、残しておきたい。
「そういえば、今日は何処行ってたんですか?まさか、デート・・・とか」
「桃里くん、今日はここまで送ってくれて感謝してる。このことは、もうこれきりに。」
僕は自分の身体を抱きしめながら言った。もうこれ以上、傷付けられるのも、傷つけるのも嫌だ。どこまで行っても、僕が桃里くんを好きになる事は無い。
「わかりました、今日は帰ります。先輩を傷つける気はなかったんです。」
「うん・・・・」
ゆっくりベッドから降りると、自分の脱ぎ捨てた服を着て、そっと僕の上に布団を掛け直した。それから、僕の頬に手を添えると、さらりと撫でて行く。
ベッドの上で、玄関のドアが閉まる音を聞いた僕は、頭から布団をかぶると、声を上げて思い切り泣いた。
喉がつぶれてもいいと思う程、遠く響いてもいいと思う程、泣き疲れるまで声を出していた。
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