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第93話
「焦ったーツ。俺の心メッチャ読まれてるよ!!」
友田さんが、部屋のドアを開けてベッドの上にごろりと寝転ぶと、服を畳もうと屈んだ僕に言った。
「どーしよ・・・俺、絶対アユムに触っちゃうもん。バレるかな?!」
一人で枕を抱きしめながら言うから
「じゃあ、なるべく離れている?」僕が言うと、「え~っ。」とふくれた。
「そういえば、友田さんのお母さんは、僕の親の事聞いてこないね。そういうものなのかな・・・?」
自分が気にしているからか、もっと詳しく聞かれると思っていた。
まあ、今は聞かれると困るんだけど・・・・・
父親の存在を知ったばかりだし・・・
「うちも、父親いないから、別に気にした事ないよ。アユムのお母さんが雑誌に出ているモデルさんだってのは言っておいた。お父さんはいないって言ったんだけどさ。・・・
まあ、実は居たって事が分って良かったと思うよ。」
初めて、友田さんの口から自分のお父さんの話が出た。
「離婚したの?ご両親。」
つい聞いてしまった。人の家の事情に首を突っ込むのは良くないんだけど、でも、僕は今自分の親の事を聞いてもらいたいと思っているから........。
「うちの父親は、亡くなったんだよ。7歳ぐらいだったかなー俺、小学生の時。」
「え、・・・そうだったんだ・・・。」
そう言えば、この家にはお父さんの存在感が無かった。
玄関先にある大きな靴も友田さんのものばかりだし。
「橋を造る仕事をしてたんだ。外国へ行って、まだ開発がされていないような地域で、橋を架けてた。」
「すごい、すごいね!」僕はなぜか興奮した。
海外で日本人の力が出せるって、すごい事だ。きっと喜ばれたんだろうな、と思った。
「でも、事故があって、流されて土砂に埋もれてしまって・・・うちだけじゃないんだけど、現地の人とか日本から来ていた社員なんかも巻き込まれて。」
「・・・・・・・・」
僕は、一気に言葉を失う。
なんと言葉を掛けたらいいのか分からなかった。
「結局未だに分からないまま・・・。多分下流に流されたか、だと思う。」
「・・・友田さん・・・・」
名前を呼ぶしかできない。そっとベッドに乗ると、僕は友田さんの肩に手を置いた。
普段の友田さんからは、そんな悲劇は微塵も感じられない。
ひまわりみたいに明るくて、まっすぐで、ちゃんと太陽の方向を向いている。
不幸とは縁のない人なんだと思っていたんだ。
「アユムが泣かなくていいよ!俺も母親も、忘れたわけじゃないけど、今こうして生きているのは俺たちだし、俺たちがちゃんと元気でいるって事が父親への感謝の印だからな。」
僕の頭に手を乗せると言うけど、余計に涙が出てしまう。
- 感謝のしるし .......。
そんな風に考えた事なかった。
自分から元気になろうなんて、思わなかった・・・・
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