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第102話

 去年の今頃は、何をしていただろう・・・ コタツに入って、恒例のテレビを眺めていたかな? 僕の家は、毎年フランス料理風のおせちを頼んでいて、お母さんがお酒を飲みながらおつまみにしていた。 だから、年が明ける前には、おせちの中身が半分になっていたっけ。 「今年はちゃんと、年越してから食べるわね?」と笑ったが、ちゃんと別におつまみ用の料理を頼んでいたらしい。 お父さんと、二人でお酒を飲みながらテレビを見ている。 少し離れて二人を見ると、昔の記憶が陽炎の様に瞼に浮かんできた。 昔の僕は確かに笑っていた。誰かの膝の上で、笑っていたような気がする。 それが、このお父さん? きっとまだ、大学生になったばかりだっただろうな・・・ 「さあ、そうしたら出掛ける?あと十五分で年が明けるから。」 そう言ってお母さんがコートを羽織った。 「うん、行こうか!」 僕とお父さんが言って、上着を羽織ると玄関へと向かう。 暗闇に映し出される外灯の明かりに、ちらほらと白いものが光っている。 はぁーっと息を吐けば、白い靄がかかった。 三人で近くの神社へと歩くが、他にも同じように歩いている人たちがいて、みな家族連れ。 僕は、なんだかくすぐったい様な気持ちになる。初めての三人での初詣。 小さい時なら、はしゃいでお父さんとお母さんの手を取り歩くんだろうな。 二人の間でぶら下がったりするのかも・・・と思った。 さすがに、今はそんな事したら照れるけど・・・・・・ でも、お父さんの手を取ってみた。 少し目を丸くして、僕の事を見るが、口元を上げるとそのまま黙って歩く。 手袋はしていても、なんとなく熱は伝わるもので、ほんのり暖かい。 「あーっ、いいな!」 お母さんが僕たちを見て言う。 「はい、・・・どうぞ。」僕がもう片方の手を差し出すと、お母さんはニッコリ笑った。 その手を取ると、三人で手を繋いで神社の鳥居をくぐる。 除夜の鐘はもう鳴っていたけれど、僕らは神聖な気持ちで参道を歩いて行った。

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