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第108話
二人でオムライスを平らげて、僕は抹茶アイスに手を伸ばす。
甘さの中に、ほのかな苦み。この味が好き。甘いクリームだけなのはどうも胸やけがする。
なんて事を友田さんに言ったら
「胸やけって・・・おじさんか!」と笑われた。
若くたって胸やけぐらいするのに・・・
「なあ、お父さん明後日ハワイに帰るんだろ?それまでに返事をくれって?!」
友田さんは、僕が不機嫌なのにどんどん話を進めてくる。
「や、それまでにって事は無いけど・・・」
アイスをすくうと口に運んだが、目の前でなぜか口を開けている友田さん。
「なに?食べたいの?」と聞くと「うん、一口。」と言った。
「・・・・・・」
僕は辺りを見回すと、誰も見ていないのを確かめてから、自分のスプーンですくったアイスを友田さんの口に放り込んだ。
「うまッ!」一言吠えると飲み込む。
こういうところ、子供みたいで可愛いんだよね・・・・
と、僕の不機嫌は飛んでしまったみたい。
「お父さんは、アユムが大人になった時の事とか心配しているのかもな。うちなんかも、父親が亡くなっているってだけで、変に心配されたりするからさ・・・」
「そうなの?」
「ほら、経済的に、とかいろいろ・・・。アユムの場合は、お父さんの存在が分からない訳だから尚更だ。」
友田さんは、僕の顔をしっかり見ると話してくれた。
父親がいないという事は、それほどまでに面倒なことなのか?
いちいち他人に心配されなくたって・・・と思うんだけど。
「認知してもらった方がいいのかな?そしたら面倒じゃない?」
僕が聞くが、友田さんはう~ん、と言って首を傾げた。
「ゴメン、そこら辺の事は俺には分からないや。結局は、法的にどうこうって事だろ?生活が変わるわけじゃないしさ・・・。」
「うん、生活はこのまま。お父さんにはハワイに家族がいるし、お母さんは日本で働くし、僕もこのまま学校へ通うし・・・」と言って、忘れていたことを思い出した。
「僕、高校生になった時のこと考えなくちゃ。」
「は?」
突然の僕の話に友田さんは驚くが、認知の事と同じぐらい、僕は進路の事も考えなくちゃいけなかったんだった。
「高校って、海星学院の事?」
聞かれて「うん。」と言う。
「・・・クラスに行けそうにない?」と、友田さんが小さな声で聞いた。
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