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第109話

 僕がクラスに行けなくなってから、もう2年が経つ。 はっきりこの日からって事は分からないけど、カウンセリングルームや特別室が僕の身の置き場所になってから、クラスへは余計に足が向かなくて・・・ ちゃんと考えなければと思っていたのに。 「アユムは目立つからなぁ。ちょっかい出したくなるのかも.......。」 そう言って友田さんが眉を寄せる。その頭の中で誰かの顔が浮かんでいるんだろうか。 少しだけ険しい顔になった。 「友田さん!僕はもう大丈夫だよ。それに僕には・・・・友田さんがいるし。」 というと、一瞬で表情が変わり、口元も緩んだ。 「うん、まあな。」ちょっとはにかんだ顔がやっぱり可愛い。 僕が可愛いなんて言ったら、きっと気を悪くしちゃうから言わないけど.....。 いつも頼ってばかりで、本当に申し訳ないなって思っている。 いつか、僕も友田さんに頼られる人になりたいな........。 そんなことを思いながら店を後にした。 今度はちゃんとワリカンで支払いをしたが、アイスの分も半分支払ってもらって、やっぱり年上ぶってるな、と思った。でも、機嫌がよさそうだからそのままおごられておく。 「どうする?結局、俺何の役にも立ってないけど・・・・認知の話は、アユムのお母さんとも話し合った方がいいんじゃないかな。」 「そうだね。でも、友田さんの顔が見られてよかった。十分僕の役にはたってくれてるよ?!一人だったら、ずっと答えを出そうと頭を抱えていただろうし・・・。」 僕らは話しながら通りを歩いて行くが、時折手の甲が当たると、意識がそこに集中してしまう。すれ違うカップルの、繋いだ手が羨ましい。 僕が意識をしない様に、自分のコートのポケットに手を突っ込むと、なぜか友田さんも僕のポケットに手を差し込んだ。 「アユムのポケットでっかいから、二人分入るな。」と言って笑う。 でも、その目は少しだけ熱を帯びている。 「うん、あったかいでしょ?」そう言って、ポケットの中で手を繋いだ。 僕の身体が小さいから、コートがだぼっとしているだけなんだけど、今日はこの体格で得したな・・・と思った。繋いだ手はポケットの中でぎゅっと握られている。 誰の目にも触れない場所で、僕らは繋いだ手から互いの気持ちを確かめ合った。 出来ればずっと、何年経ってもこうして手を繋いでいられたらいいな・・・ そんな気持ちで並んで歩いていると 「謙ちゃん!!」と、後頭部から聞き覚えのある声が。 振りかえると、ズーンとたたずむデッカイ男が二人。 学生服以外の服装は、余計に二人の人相を悪くしていた。 「「浩二くん・・・たち。」」 友田さんと二人で名前を呼べば、「お~ッす!!あ、違った。あけおめ~だった。」 浩二くんのいつもの軽いノリに、僕らは顔を見合わせて笑う。 相変わらずこの二人も仲がいい。もう一人の茶髪の人は、あんまりしゃべらないけど、浩二さんの方を常に見ている気がする。 「これから一緒にカラオケいこっ!!」 「え??」 「いこ、いこ!」 浩二くんがそういうと、二人で僕らの両側に来て、腕を掴むとずんずん歩いて行く。 - あぁあぁ、・・・新年早々拉致られてる~~ぅ!

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