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第113話

 薄暗い室内に灯るイルミネーションの様な照明から外れると、壁にもたれ掛かった僕を包み込む友田さんの腕が、腰へと延びてくる。 その手が自然に僕のシャツをたくしあげると、素肌に友田さんの指が触れビクツとなった。冷たい指先が背中を這うと、体中に電気が走るみたいで....。 重なった唇から洩れる息も熱い。 「と、もだ・・さん・・ン」 「・・アユ・・ム・・・・アユ・・」 互いに名前を呼び合うと、僕の足の間に入った友田さんの太ももが上がった。 あ.........んん..........っ 股間を刺激され、思わず唇が離れると天井を仰いだ。 「だ、め・・・だよ!・・・・」 必死で身体を話そうとする僕に、「ゴメン」と言ってそっとキスをした。 こんな所で発情してしまったら困る。 僕は友田さんの腕を取ると、少しだけ距離を置く。 「今度、・・・今度にしよう。落ち着こう・・・ね?」 「・・・うん、・・・ごめん。」 やっと僕から離れると、再び椅子に腰かけた。 しばらく落ち着くまでじっと座っていたが、二人の姿は滑稽だったろう。 何を話すでもなく、一点に集まった血がもとに戻るまで、気持ちをどこかへ飛ばしている。時折目が合うと、互いにバツの悪そうな顔をして笑い合った。 一度覚えた快感は、すぐにその刺激を呼び起こす。 でも、まさかここでなんとかするわけにはいかない。不謹慎だけど、僕はまたお父さんの事を頭に思い浮かべた。 何か真剣に考える事をしていないと、なかなか収まりそうになくて......。 「・・・そろそろ、いい?出ようか。もうすぐ30分経つからさ。」 「うん。」 そう言った途端、時間を告げるコールが鳴った。 受話器を取ると、「終わります。」と友田さんが告げ、僕らはコートを着た。 賑やかな歓楽街を抜けると、二人で駅に向かう。昼間とは違う雰囲気で、お正月バージョンになっていたが、人通りは多かった。 夕方になると電車は混んでいて、初詣の帰りなんだろう、破魔矢を手にした人が目立つ。そんな中、僕が断ったのに友田さんは家まで送ると言って付いて来てくれた。 やっぱり、甘やかされてるな.......と思いつつも、内心は嬉しい。 電車の揺れに合わせて、二人の身体が時々当たると、そのたびにドキドキする僕。 「じゃあな、会えるときメールして!・・・電話でもいいけど。」 友田さんが、マンションの前でそういうと来た道を戻って行く。 「ありがとう!!」僕は、その背中に大きな声でお礼を言ってから、エントランスの扉を開けて入って行った。 自分のするべきことが、ほんの少しだけ見えた気がして、足取りは軽かった。

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