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第126話

 恐る恐る僕の肩に手を乗せて歩くが、きっと頼りない僕の肩では、友田さんを支えきれない。 「あの、すみませんが、浩二さんたちにお願いしてもいいですか?」 友田さんの顔を覗き込んで言うと、少しホッとしたようだった。 「ああ、やっぱりアユムには俺の身体は重すぎるよ。気持ちだけ受け取っとく。」 そう言って、友田さんは浩二さんの方に手を伸ばした。 「アユムくんには、謙ちゃんのシモの世話をお願いするから!」 友田さんの腕を自分の肩にまわすと、浩二さんが言う。 僕はキョトンとしてしまい、目が点になった。 「バーカ。ひとりでトイレぐらい行けるっつうの!爺さんかよッ。」 「や、そっちじゃなくて・・・・」 と言った浩二さんの手が、友田さんの股間に伸びたから 「ぐわツ//////!!」と、友田さんが叫び声をあげた。 「ヤラシーイ・・・何やってんだよ、浩二!」 「やめて下さいよ。」 茶髪の人と僕は、二人して浩二さんに非難の声を浴びせた。 はははーツ    有楽街に僕たちの笑い声が響く。 数ヶ月前に、突然現れたこの人たちによって、僕の人生観は変わってきたように思う。 不幸に見舞われたと思った事が、結果、こうして繋がりを持ち、今は僕を和ませてくれる存在になった。 友田さんに至っては、大事な大事な存在となり、僕の事を心から大切に思ってくれる気持ちが嬉しい。桃里くんに言ったように、僕の方が先に友田さんを好きになっていた。 でもそうさせたのは、友田さんが僕に対して誠実に向き合ってくれたからだ。 突き離さないでいてくれたから、僕はこうして立っていられる。 僕の前を歩く友田さんと浩二さん、茶髪の人を眺めながら、そんな事をぼんやりと考えていたら、シャッターの降りた花屋の前に着いた。 「あれ、今日は店休み?」 浩二さんが聞く。 「や、違うんだけど、明日新装オープンの店があるとかで、そっちの飾りつけに行ってるんだ。」 「なら、部屋まで連れて行くから、後はアユムくんにお任せだな!」 浩二さんは、ニヤリと笑いながら言うから、いちいちヤらしくて・・・・ 「わかりました。僕がなんとか頑張りますから。」と言っておく。 じゃあねー、といって帰って行く浩二さんたちに、手を上げてお礼をいう友田さんだったが、僕と目が合うと少しだけ眉を下げる。 ベッドに腰を掛け、僕の方に手を伸ばすと、おいで、と招き寄せた。 隣に腰を降ろし、顔だけ友田さんに向ける。 「俺さ・・・・あの時なんとなく、アイツの顔が浮かんでたんだ。」 僕の顔は見ずに、膝に置いた手を見ながら言うけど、少し辛そう。 「アイツを呼び出して、先になんとかしてやるべきだったな。そしたら、アユムが嫌な思いせずに済んだのに。」 「友田さん・・・・・有難うございます。でも、あの日は、何も聞かれなかったことが僕の救いでしたよ。嫌な記憶はすぐに消えたし。」 「うん、そうなのかな?それならいいんだけど・・・。」 「それに、今回僕たちの関係を話したから、彼も分かってくれたと思います。」 「そうだな・・・・俺のもんって、言っちゃったしな?!」 「うん。・・・・・・・・」 僕が恥ずかしくて下を向く。すると、膝に置いた手を僕の肩に乗せた友田さんが、こちらを向いた。 なんとなく、顔をあげたら目が合って、その目がちょっと憂いを帯びているのが分かった僕は、身体を傾けて友田さんに寄りかかった。 僕の肩をギュっと抱きしめてくれる手が暖かい。 僕たちは、しばらくそうしていた。

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