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第2話・僕の救世主。 ③
当然、相手も僕のことなんて気にかけることもなかったと思うし、僕っていう人物がいたっていうことも記憶には残っていないと思う。
だけど、井上先生は違った。
突然倒れたっていうのもあるんだろうけど、彼は僕を心配してくれている。
そのことがとても嬉しい。
だから僕は、他人にはめったに言わない自分のことについて、井上先生に話しはじめる。
ほぼ面識のない人にこんなことを言うのはおかしいって自分でも思う。
だけど僕にとってアラタさんは救世主で、そんなアラタさんの声にそっくりな井上先生だ。
言ってみようかなって思うのも、ムリはないよね。
「僕、昔から熟睡できない体質なんです。でも、日に日に睡眠時間が減ってきてて、2時間ごとに目が覚めるっていうか......。そんな感じで夜は寝たり起きたりを繰り返すようになってたんです。たぶん、原因は僕の『考えすぎ』にあるじゃないかなって思うんですけど......でもこれはどうにもできなくって......。『考えすぎ』っていうのは――僕、人と話すことが苦手で、コミュニケーションがうまくできないんです。他人の目ばかり気になって、ちょっとしたことなんですけど、たとえば、月曜の朝礼の時、朝から人をかき分けて並ぶのがいやだなぁとか。自分の出席番号と同じ数字の日が来たら授業で当てられる回数も増えるし、当てられた時にどんな質問が来るんだろうとか。質問に答えられなかったら、みんなに馬鹿にされるんじゃないかとか。――そんなことが頭の中でぐるぐる回ってしまうんです」
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