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第2話・僕の救世主。 ⑥

 驚いている井上先生に、僕はゆっくりうなずいた。  パーソナリティーの『アラタさん』の声に出会って安眠できていたこと。  そして、アラタさんの声と井上先生の声が似ていることを全部、話した。  そうして僕が全部話したあと、井上先生は黙ったきりになってしまった。  それって、井上先生は僕のことをかなりの小心者だって思っているのかもしれない。  どうして眠れないのかって訊かなきゃよかったと――煩わしいって思っているのかもしれない。  ――いや、それよりも、男がこんな悩みで眠れなくなるなんておかしいと思っているのかもしれない。  アラタさんと同じ声っていうだけで、これを話したのは間違いだったのかも......。  僕は顔を俯けたまま、井上先生の表情が気になって、うわ掛け布団の上から視線だけを移した。  そうしたら、井上先生がグレーのスーツの懐からメモ帳とボールペンを取り出したのを見た。  サラサラと、ボールペンが紙の上をなぞる音が奏でられる。  いったい何を書いているんだろう。

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