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第2話・僕の救世主。 ⑧

『電話してくるといいよ』  井上先生の優しい言葉が僕の頭にこだまする。  だけどそれは、先生と生徒っていう社交辞令みたいなもので、僕の悩みを訊いてしまったから、そう言っただけかもしれない。  本当は、『めんどくさい』とか思われてるいないかもしれない。  でも、僕はアラタさんに似たあの安らぐしっとりした声を聴きたい。  もう一度聴いたら、きっとすぐに眠れる気がする......。  ああ、でも迷惑かも......。  井上先生はいつでも電話していいって言ってたけれど、やっぱり授業とかも受け持ってるし、慣れない学校で苦戦しているかもだし......。  先生は気さくだし友達も多そうだから電話、今だって使っているかもしれないし......。  ああ、どうしよう。  ……なんて思って携帯の画面を見下ろしながら布団にくるまっていろいろ考えていると――。  ……ポチ。  勢い余って通話ボタンをタップしてしまった。  うわっ、僕ってバカ!!  何してるんだよ!!  早く電話切らなきゃ!!  布団にくるまったまま、ひとりで焦っていると......。 『はい、井上です』

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