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第2話・僕の救世主。 ⑨
しっとりとした、あの声が携帯から聞こえてきた。
だけど僕は勢いで押してしまっただけ――。
井上先生と何を話すか、まったく内容を考えていなかった。
だから当然、僕は画面を見ながら口をパクパクさせて、無言のままで――......。
『もしもし?』
そんな僕の姿も見えない井上先生は、少し困っている口調になっている。
ああ、どうしよう。
イタズラ電話かと思われてしまうかも。
そうしたら、僕の電話番号を着信拒否されて......。
一生アラタさんの声が聴けなくなってしまう!!
焦る僕は、だけどよけいに何も言えなくなってしまう。
『もしかして中山くん、かな?』
その言葉に――。
その声に――。
びっくりした。
だって、僕。
何も言ってない。
それなのに、井上先生は僕だってわかってくれた。
しかも、そう言った井上先生の声が、アラタさんよりもずっとずっと優しくて、あたたかくて......。
「はい」
気がつけば、僕はスマートフォンを左耳にくっつけて、返事をしていたんだ。
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