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第3話・発覚! コイゴコロ。 ④

 全然眠れなくなったっていうのは先生には言ってない。  だって、言ったらきっと眠れない理由を訊かれる。  そうしたら、僕はこの想いを井上先生に告げるしかなくなる。  だから言えない。  それに、先生は多忙だ。  教育実習もあるけれど、大学の課題とかもあると思う。  だから僕から眠れなくなったことを言わなければ井上先生には気づかれることもない。  そう思っていた。  ――でも、それは間違いだったんだ。  先生はものすごく優しくて、ものすごく親切だったのを、僕は忘れてしまっていた。  眠れなくなって3日が過ぎた、終礼というショートホームルームが終わったちょうどその頃。  井上先生は突然僕の目の前までやってきた。 「顔色が悪いよ? 一人で帰れる?」  以前、目の前で倒れたことがあった僕のことを気にしてくれていたんだ。  だけど僕は好きっていう感情があるから素直にうなずくことができず、「平気です」って言って立ち上がった。  ――それなのに......。  あれ?  僕の視界がまた黒のモザイクで覆われる。  倒れる!!  そう思った時、だけど僕の体に衝撃はやって来なかった。

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