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続・ひつじがいっぴき。 ⑫
「海里を大切にしようと思ったんだが、側にいるどうしようもなくなって......。ごめんね、不安にさせていたんだね」
優しい新さんはそうやって泣き虫な僕をそっと包み込んでくれた。
次第に涙は引っ込んでいく......。
「節操のない奴だと思われるのが怖くてこういう行動に出なかったんだけれど......されてイヤじゃなかった?」
イヤなはずがない。
だって、大好きな新さんなんだ。
抱きしめられたまま訊 かれて、僕はコクンとうなずいた。
「気持ちよかったから......」
いつもならこんなこと、恥ずかしくて言えないけれど、今日は飲まれてしまったからか、羞恥のピークは達している。それ以上はもう何も思わなかった。
だから新さんには本当のことを言う。
「そう、気持ちよかったんだ......」
新さんは、僕の言葉を復唱すると、より強く抱きしめてくれた。
――ああ、すごく幸せだ。
だけどね、新さん。
僕の疼きはまだ解消されていないよ?
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