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第3話

「なっ、何しに来たんだ!」 「何って」 〈俺〉は脚を組み、オレの顎を指ですくう。 「俺を呼んだのはお前だろう」 「べ、別に呼んだ訳じゃ…」  口では否定するものの、完全には言い切れない。ザクロを食べたらどうなるかは知っている。食べても〈俺〉が現れないことに、疑問を持ったのも事実だ。 「待ちくたびれて、自分で自分を慰めたのか? 可愛い奴だ」  あんな現場を見られたんじゃ、反論はできない。〈俺〉はオレの顔を引き寄せた。 「何個目のザクロで俺を誘うのか見てたが、予想よりも早かったな」  ククク…と、〈俺〉は喉の奥で噛み殺すような笑い声を出す。 「まさかシーツに擦りつけて、自分で後ろをいじって、犯してだの気持ちいいだのと喚くとはな」  オレのオナニーの仕方が予想以上だったのか、〈俺〉は愉快そうに目を細める。 「何だよ、性格悪過ぎるぞ!」 「この性格も、お前の一部だ」  そうだった。こうして対峙しているけど、眼鏡のこいつも〈オレ〉なんだ。 「まあ言うなれば、俺は犯したい佐伯克哉。お前は犯されたい佐伯克哉ってとこだな」 「だ…誰が」 “犯されたいもんか”、その言葉が継げなかった。現にオレは、オナニーしながら“犯して”と口走っていた。 「もうそろそろ、イキたいんだろう? 見ててやるから、続きをしろ」 「見られてできるわけないだろっ」  ギシッとベッドがきしむ。〈俺〉がベッドの上に片脚を乗せた。鼓動が早くなる。その鼓動は次の瞬間、甘い響きとなって全身に広がる。〈俺〉がオレの手首をつかんだ。見ると〈俺〉は、赤いネクタイを持っている。〈俺〉はスーツ姿で、ネクタイも締めている。ということは、オレのネクタイだ。いつの間に…。 〈俺〉は手際よく、オレの手首をネクタイで、後ろ手に縛った。 「ほら、両手を拘束しておいた。手では擦れないだろう」  尾てい骨の上辺りで縛られていては、手を前に回せない。床オナニーの続きをしろというのか。  いきなり、〈俺〉の唇が重なった。 「んうっ…」  激しいキスに、呼吸すらも忘れてしまいそうになる。器用な舌がオレの舌にじゃれつき、いつの間にかオレもその動きに応えて、むさぼっていた。  と、いきなり体をうつぶせに、シーツに押しつけられた。息苦しさに首を横に向ける。  尻の間に指が侵入した。 「あっ…、ああっ…」  狭い道を進む指は、感じる所を次々とつつく。奥まで来たときには、さっき自分でいじっていたせいもあり、ソコは充分ほぐれていた。 「準備万端だな。そんなに犯されたかったのか?」  もうここまで来たら、自分を取り繕う理由なんてない。もとより、そんな余裕はない。 「…して」 「何をだ?」  恥ずかしくて、一度唇を噛む。だが―― 「あっ…、はあっ…いや…」  悪戯な指に呆気なく、唇の封印が解かれた。 「…セックス…」  また、あいつの“ククク”と笑う声が聞こえた。 「じゃあ、もう一度シーツでオナニーしろ。俺が挿れたいと思うほどに、淫乱なお前を見せてみろ」  早く、体にこもった熱を何とかしたい。もう恥ずかしさもかなぐり捨てて、オレは腰を動かし、自分自身をシーツに擦りつけた。強く押しつけなくても、先端が刺激されたらそれだけでも気持ちいい。後ろ手に縛られ腰をクネクネ動かす姿は、さぞかし間抜けだろう。でも、この刺激は止められない。 「今日のお前は素直だな。望みどおりにしてやろう。まずは俺に奉仕しろ」  そう言うと〈俺〉はまた、ベッドに腰掛けた。オレはベッドから下りると、〈俺〉の真正面でひざまずく。〈俺〉がベルトとスラックスのホックを外し、ジッパーを下ろす。自分自身が脱いでる所を見ているなんて、変な気分だ。けど、もっとおかしいのは、自分が“欲しい”と思っていること。今はこいつが欲しい。

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