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第1話

手術が終わったのは午後9時を過ぎていた。 長丁場で疲れ気味ではあるが、きちんと救う事が出来たのが何よりの救いである。 朝比奈は私からの連絡を待っていたのだろうか、それとも誰か別の人間と食事でもしているのかもしれないな。 私には仲良くしている唯一の人であるが朝比奈にとってはただの友人か知り合いの一人に過ぎないのかもしれない。 とりあえず連絡してみるか、あまり期待するなと念押ししたから下手な期待はしていないだろうが礼儀として行うべきだと感じた。 私は手術室から出て白衣に着替えるべく更衣室へ立ち寄った。 自分のロッカーの中にある携帯を取り出し簡潔なメールを朝比奈に送る。 ー今手術が終わった、飯はもう食べたのか?- 返信は小まめに返す方だから数分後には返信があるかと思い白衣のポケットに携帯を入れ医局へ向かう。医者は患者の病を治すことも大事だが結構デスクワークも多い。 医局は静まり返っていて私一人が居る状況だ、夜勤に当たった医師は患者の元へ行っているのかもしれないな。私は夜勤ではないからそろそろ帰るとするか。 デスクワークを終えて、更衣室へ向かい白衣を脱ぐ。 私服に着替えて敷地内にある寮の自室へと向かう途中に朝比奈から返信が有った。 珍しく返信が遅くて少し気がかりだったが取りあえず開いてみることにする。 ーお疲れ様、飯はまだだよ。待ってるって言ったからね、約束は守るよ。ーという内容だった。 律義に自分の発言を守るところも朝比奈らしいなと思う、だからみんな信頼して信用して着いて行くんだと思う。 私はマメにメールをするタイプではない、とても苦手で自分からあまり送らない。 絵文字や顔文字といった洒落たものは使った経験がない。 素っ気ないと思われるから使ってみたらと朝比奈に何度か言われたが私がメールを使うのは業務連絡を行う程度で絵文字など使うのは非常識ではないかと感じているのもある。 考え事をしながらも歩みを止めることなく社宅の自室へ向かい荷物を下ろしラフな服装に着替えた。 ー今から部屋に伺ってもよいだろうか。ーと簡潔にメールを朝比奈へ送って返信を待つ間に風呂の掃除など出来る限りの家事を済ませる。 不規則な生活を行っているので部屋は決して綺麗とは言えないがこれでも一応は綺麗好きなんだ。 私は朝比奈と食事しない日は自炊はせず惣菜やコンビニ弁当など栄養的に如何なものかと思う物を食している。 栄養が偏らない様にサプリメントなどは服用しているが体には良くない事は重々分かっている。 ソファに座りながら論文を読み時間を潰すことにした。 そうこうしていると返信が帰ってきた。 ー勿論、大歓迎だよ。待ってるからね。ーという内容だった。 私は論文をソファの前のテーブルに置き、部屋を出た。

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