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第3話
午前中から振り始めた雨は午後になっても止まず、筋トレで本日の部活動が終了すると、桃城は脇目も振らずにそそくさと着替えて部室を出て行ってしまった。
「桃ちゃん先輩どうしたんだろ?」
普段ならば、着替え終わっても部室で喋っていたはずの桃城の行動に、一年生達は首を傾げる。
「ねぇ、リョーマ君知ってる?」
「…って、俺が知る訳ないじゃん。」
相変わらず他人の事に興味が無さそうな越前は、そう言うとジャージを脱いで制服に着替え始めていた。
と、その越前の背後から突然人影が現れ、越前に飛び付く。
「へっへ~♪気になる?桃の行動v」
「菊丸先輩!」
「菊丸先輩…苦しいっス…」
越前越しに、カチローらにVサインをしながら、菊丸は言う。
「今日はさ、海堂の面会謝絶が解ける日なんだよ~ん♪」
「あぁ…海堂先輩か…」
「そういや海堂先輩ってどうしたんだ?しばらく部活に来てないよな。」
「堀尾くん、ちゃんと大石先輩の話聞いてた?」
カチローが呆れ顔で堀尾を見る。
「な、な、何だよっ!海堂先輩がどうかしたのか?」
「…海堂先輩。車に撥ねられたんだよ。」
越前が小さな声でそう言う。
「ええーーっ!?か、海堂先輩が!?」
素っ頓狂な堀尾の声は、部室内に響き渡る。
「何だぁ?堀尾は知らなかったの?」
「初耳っスよ!」
「そうそう!それで今海堂って記憶喪失になっちゃってるんだよなー」
「…菊丸先輩、そこまで話しちゃって良いんスか?」
越前に指摘され、ギクリとした菊丸はそっと越前から離れる。
「記憶喪失!?」
「堀尾くん……もうその話はしない方が良いよ…」
カチローが小さな声で堀尾に注意を促す。
「何でだよ?気になるだろ?」
「だって…」
そう言いながらカチローは扉の方をそっと指差す。
するとそこにいたのは今見まわりから戻ってきたばかりの大石、乾の二人。
「堀尾っ!着替え終わったのならいつまでも喋っていないで早く帰りなさいっ」
「ヒィっ!す、すいません大石先輩っ!」
大石に注意された堀尾は学ランのボタンをあたふたと留め、逃げるように部室を後にした。
「英二も」
大石の視線が菊丸に向けられる。
「他の部員を動揺させるような事を言わないように。」
「ごめん……大石」
「越前も、あまり海堂の話は出さないようにな。」
乾がそっと言う。
「はい…すいませんでした」
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