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第4話
大分小雨になってきた雨の中を軽く走り抜けながら、桃城は海堂の入院する病院へと向かっていた。
海堂に会って、何を言えば良いのか桃城にはまだ考え付いていなかったが、兎に角会わずにはいられなかった。
信号待ちすらも、時間が惜しい程に。
すぐにでも海堂に会いたかった。
そして、歩行者用の信号が青に変わると、桃城はすかさず走り出す。
早く会いたい。
一刻も早く会いたい!
「……?」
花屋の店先で桃城は足を止める。
冬の真っ最中だというのに、絶える事のない色とりどりの花。
中でも目に留まった…珍しいオレンジ色の花。
桃城は傘を閉じて傘立てに入れると、店の中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませー」
茶色がかった長い髪をポニーテールに括った、笑顔が明るい女性が桃城の側にやってきた。
「彼女への贈り物、かな?」
「えっ?」
突然『彼女』と言われ、桃城はビックリして顔を上げる。
にこにこと微笑む女性の笑顔が、逆に今の桃城には辛かった。
「いえ…彼女じゃ…ないんスけど、その……お見舞いに。」
そう言いながらも、桃城の視線の先にあるのは、先程から気になっていたオレンジ色の花。
何故か、その花と海堂の顔が重なって見えた。
「この花にしますか?」
「あ、はいこれ…何て言う花なんですか?」
「これはオレンジウムっていう花よ。」
「おれんじうむ…?」
花の色をそのまま表す名前だった。
「花言葉は確か……」
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