6 / 12

第6話

海堂のせいじゃない。 そう…俺の…… 「薫さん、私今日は一回帰るわね。」 何を思ったのか、突然穂摘がそう言い出した。 「えっ…」 「また明日、葉末くんと一緒に来るわ。」 「そうですか…」 海堂は再び俯く。 手荷物を持って、穂摘は桃城に近寄る。 「それじゃあ桃城さん、後の事は頼みましたよ。」 「えっ、後の事って…?」 穂摘の言葉に桃城が振り返った時、穂摘はもうそこにいなかった。 「……」 何が起こったのかよく理解出来ない内に二人きりにされてしまった桃城と海堂。 桃城がゆっくりと海堂の方を振り返ると、海堂は大きな双眸で桃城を見ていた。 ギクリ と桃城の中の何かが疼いた。 「……座ったらどうですか」 海堂は視線で傍らの椅子を指し示す。 「い、いいのか?」 「はい、どうぞ…」 海堂に勧められるがまま、桃城は海堂のベッドの傍らの椅子に腰を下す。 そして始まる沈黙。 「……」 「……」 その沈黙を先に打ち破ったのは海堂の方だった。 「あの……」 心臓が口から飛び出しそうな程驚きながら、桃城は顔を上げた。 「なっ、なんだ?」 「桃城さんと…言うのですよね?」 「あぁ……桃城武。」 「桃城…武……」 海堂は桃城の言った言葉を自分の中で覚えるように反復した。 「桃城さんと俺は…どういう関係だったんですか?」 狙っているのではないかと疑いたくなるような海堂の発言に、桃城は困惑した。 「……同じ青春学園テニス部の二年生で…まぁ、ライバルって感じだな。」 「ライバル…そうですか…」 「あ、そうだこれっ」 桃城は忘れ掛けていた、花束を海堂の手元に置いた。 海堂はその花束を見て、呆けていた。 「…何ですか?この花束は。」 「今来る時に側の花屋で買ったんだ。『オレンジウム』って名前なんだとよ。」 「オレンジ…ウム…名前の通り、オレンジ色の花ですね。」 その時、海堂から笑みが零れた。 そして同時にあの時の顔が思い出される。 「……ッ!」 「…桃城さん?」 「悪ィ…何でもねぇ…」

ともだちにシェアしよう!