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第9話

「やっべ~な、やっべ~よ。もう一時間近く遅れちまった。」 桃城は腕時計を見ながら、自転車を走らせていた。 「まぁた海堂怒ってんだろうなぁ」 そう言いながらも、桃城の顔はにやけていた。 (ま、何だかんだ言いながら待っててくれっからな~♪) 待ち合わせ場所は学校から少し離れたハンバーガーショップの前。練習が終わった後に二人はいつもここで夕食前の間食をしている。 しかし、一緒に下校するのは恥ずかしいという海堂の言葉で、入り口の所で待ち合わせをしていたのだった。 「ちっ…遅ぇじゃねーか桃城の奴。」 海堂も腕時計を見ながら呟いていた。 もう既に海堂がこの場に立ってから一時間以上経っている。 「先に食うぞ。あの野郎…」 しかし『入り口の前で待ち合わせ』というのは二人で決めた約束事だったので、それでも海堂は入り口の所で桃城が来るのを待っていた。 すると、その時。 「お~い!海堂~!」 「!」 桃城の声だ、と海堂は思って顔を上げる。 すると、道路を挟んだ反対側から桃城が自転車で車道を走ってきていた。 「遅ェだろボケっ!」 「いやぁ~悪ィ。ゴメンって。」 謝るように顔の前で桃城が手を合わせた瞬間、それは起こった。 海堂が一瞬青ざめたような顔をしてガードレールに近寄ってくる。 「悪ィ悪ィ!また遅くなっちまったよ!」 「桃城っ…馬鹿ッ!お前っ……!!」 桃城が海堂の忠告に気付いた時、もう遅かった。 自転車を両手放し運転していた桃城の目の前にあった、大型トラック。 「…!!」 「桃城ッ!!」 キキキキーーッ!!

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