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第3話
「ますたぁなんか酒〜」
この際酒に吞まれて忘れられないだろうか、なんて事を考えたけど、結局はどうせいつものように酷い二日酔いと共に思い出は残る。
「飲み過ぎよ。あ、ほら。彼来たから、ちゅうしてもらいな。」
「なに、マスター。知らない間に俺この子とキスする事になってんの?」
ケタケタ笑う声と、マスターが楽しそうに世間話を始めた。自然に隣の席に座った“彼”を見る為に顔を上げた。
「お、起きた?マスター、とりあえずこの子に水あげてよ。」
びっくりした。
彼は、高級なブランドのシックなスーツに身を包み、腕時計もネクタイも、更にはふわりと香る香水までもが高級ブランド。しかし、どれも彼の落ち着いた雰囲気に合っている。なにより―
「似てる……」
「ん?俺、誰かに似てる?」
背格好とか顔の造形とか、よく見ると違う人だけど。クリっとした大きな目が笑うと無くなるところとか、左目の目尻にある色気黒子とか、薄すぎず厚すぎず色艶の良い唇とか。
忘れたいのに忘れられない、マサに似てた。
「っすみません、友人にちょっと似てたから……」
「そう?それよりさ、まだ飲めるなら、俺と飲み直さない?」
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