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第5話

 「太一くんは、元々ゲイではないんでしょ?俺で、大丈夫なの?」  「わかん、ない……けど……俺、7年も片想いしてて……何も、言えないままっ、アイツ、結婚…っ、しちゃったっ…俺っ、もう男とか女とかわかんねぇよ……っ、だって、男同士とか関係なく、アイツを好きになったんだっ……」  「……そっかぁ…受け入れるのも、側で見てるのも辛かったよね。でも、好きって認められたのは、とても偉いことだよ。」  辛くても辛くても涙は出なかった。あれほど渇いたと思ってたのに、何故だろう。暖かくて大きな手に両の頬を包まれると、何かが緩んだ気がする。  「おれ…っ、もう忘れたいっ…」  「……忘れようとすると、心の裏側では深く残るものだよ。上書きしてあげようか、俺が。」  「……んっ」  むずむずする。触れた唇が、撫でられる頬が、身体の内が。  「力抜いて。」  「……んんっ、ちゅ…ふぁ、」  「ちゅっ、ちゅ、」  静かな部屋に響く濡れた音が恥ずかしい。 今までキスしてる時、どうしてたっけ。手はどこに置いてた?舌はどう絡ませてた?目は開けてた?声なんか出てた?  あぁもう……どうでもいいや……  「んぁ…ちゅっ、っふ…んんっ、あっ」  「ふふ、そんなに寂しそうな顔しちゃって。どう?上書き出来そう?それとも、もっとスゴいコトで上書きする?」  「……スゴい……コト?」  「かわいいね。何にも知らない子供に手を出してる気分だよ。」

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