13 / 132
第7話
耳は弱いって、もうわかってるはずなのに。肩に顔を埋め、濡れた吐息が容赦なく犯す。
ただ忘れる為に。苦しみから、痛みから解放される為に。俺はこの人を利用してる。優しい、この人を。
「いいね?後悔なんてさせるつもりはないけど、知らなかった頃に、もう後戻りは出来ないよ。」
「……あ、の…おれっ、はじめて、だから………」
「うん?」
優しく、労るように微笑まれ、見つめられ―
ここまで許しておいて、今更やめてくださいなんて言わないし、言えない。俺にとっては救世主なんだ。
どんな形であれ、足元を覆う大きな沼から逃げ出したい。
「痛くない…ように、シテクダサイ………」
ときめいてしまった。まるでそれが愛しい人に向けられるそれのようで―
「余裕はないけど、できる限りを尽くすよ。」
「よ…よろしく、お願いします………」
「っはは、ゆっくりするから、痛かったら言って。流石に辞めてはあげららないけどね。」
緊張と不安を取り除くような、優しい、軽く触れるだけのキスから始まる。時折頬を撫でられ、それが首筋、胸元、腰へと滑っていく。段々と身体が火照ってきて、気付けば中心へも熱が集まっていた。
無意識の内に、隆明さんの胸元の服を掴んでいた手を、指を絡ませるように繋ぎ止められた。
また、愛しいそれに向けられている気がして、ときめいてしまった。
ともだちにシェアしよう!