27 / 132

第19話

 「そうだ、太一くん流石に明日は仕事だよね?今日家に帰るならワインは飲まないでいるけど…どうする?パスタに合うワインがあるんだけど。」  帰り道、隆明さんはもう夕飯のメニューを決めたのか、俺にそんなことを言う。  そんなの、選択肢なんかあってないような物じゃないか…  「ほんと、隆明さんってズルいですよね。」  「そうだよ。俺はズルい大人だ。それで、決まった?」  「朝、送って下さいね。」  「もちろん。じゃあ今夜は楽しく呑もう。昨日みたいな悪酔いした君は、あまり綺麗じゃない。心からの笑顔がみたいよ。」  ムっとした顔で嫌味を言ったつもりだったのだが、隆明さんはそんな事よりも、昨日の俺の酔い方が気に入らなかったみたい。  心からの、笑顔…  「ちゃんと、前見て両手で運転して下さい。事故とかヤです。」  「やだな、ちゃんと見てるよ。信号が赤の間くらい可愛い子の顔見ちゃダメかい?」  「っダメです!ほら!青になりましたよ!」  優しく、愛しいものを見る目をした隆明さんに、頭から頬までをゆっくり撫でられ、顔がぶわっと熱を持った。見つめられているのだから隠しきれはしないが、咄嗟に顔を背けて突っぱねてしまった。

ともだちにシェアしよう!