28 / 132

第20話

 「じゃあ俺はご飯作るから、太一くんは先に風呂入ってきなよ。」  「いえ、何か手伝いますよ。」  「う〜ん、そう?じゃあお願いしようかな。」  昨日来た時には気付かなかったが、タワーマンション上層階の角部屋。当たり前に天井が高く、一部屋ずつが広い。キッチンは収納が多く、お洒落なアイランドキッチンで、床も棚も一面清潔感のある白。  うっかり何か零してしまったら怒られそうだ…気をつけよう。  テキパキとパスタを茹で、ソースを作る隆明さんとは一転、葉野菜を洗っては千切りボウルに入れる俺。  「あの、野菜を洗って千切るだけなんて…俺他にも出来る事ありますよ?」  「いや、寧ろ何もしないで隣に居てくれるだけでも満足なんだよ。なんだか新婚夫婦みたいじゃないか?」  「っな、何言ってるんですか!」  隆明さんのからかって楽しんでいる様子にまたもムッとしていると、作業が終わった隆明さんに、今度は腰を抱かれた。  「なんか良いな、こういうの。これを癒しと言うんだろうな。」  「おっ、俺は全く癒されません!」  「心臓バクバク言ってるもんな。」  「うっ!うるさいです〜!」  昨日今日で流され過ぎでしょ、って思うけど、あれだけマサのことを考えて、苦しくて悲しかった感情が、今はどこを探しても存在しない。そればかりか、隆明さんにからかわれるのも、優しく扱われるのも、心から嬉しくて堪らない。  隆明さんと過ごすこの時間が、俺は純粋に好きだ。

ともだちにシェアしよう!