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第23話
「忘れ物ない?」
「…多分、大丈夫です。」
「ま、あればまた来た時にな。」
悶々としていた癖に、隣に温もりを感じた途端にぐっすりと眠ってしまった俺。
またも朝食の準備を終えた隆明さんに優しく声を掛けられ、目覚め良く起こされた。
何故だか嬉しそうな隆明さんに着替えを借りて、至れり尽くせりで会社まで送って貰った。
「次左だっけ?」
「あ、曲がってすぐのところで大丈夫です。」
「はい、到着。」
「送って頂いて、ありがとうございました。」
「うん。仕事頑張って。暇な時にまた連絡するね。」
「…はい、」
隆明さんは、2週間出張先で休みなく働いた代償に、数日の休暇を貰ったようで、寝溜めするよ、と疲れた顔をして笑っていた。
疲れていたのに、何故自分につきあってくれたんだろう。
「こんの、たかあき…さん……」
別れ際にそう言えばまだだったね、と交換した連絡先。その名前をなぞれば、何故だか恋しいとも感じる。
「っし、仕事仕事。」
次は、いつ会えるんだろう。
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