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第55話

 一般的で平々凡々な家庭で育った普通の男の子である俺は、キス一つで同性を好きになったかもなんて、認めたくはなかった。  いや、認めたら終わりだと思っていた。  「太一!今日合コン誘われたんだけど、お前も行くよな?」  「あ…うん、行く。」  「じゃあ18時に駅な。」  簡単に俺の性的嗜好までをもまるっと変えてしまった相手は、女の子が好きでチャラチャラ遊んでて、それでもモテモテなイケメンなのだ。  同性なんてイレギュラーな相手と付き合うという選択肢を、コイツが取るはずがない。  好きだなんて認めた途端に失恋だし、バレてしまえば友人と言う立ち位置さえも失ってしまう。  俺は、この思いには気付かないフリをして、必死に雅人の友人を演じている。  「じゃ、ラインも交換したし、そろそろ帰りますか!」  「寒いから途中で肉まん買って帰ろ〜!」  「え、ミキちゃんまだ食べるん?凄いね〜」  俺は雅人の向かいの席で、女の子と親密に会話をするのを横目で見てた。お開きになって駅までの道を皆で歩く時も、雅人に群がる女の子を後ろから眺める。  気持ちには気付かないフリをしているのに、どうしても思ってしまう。  俺も女の子だったらな〜って。

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