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第66話
「そっか。太一くんがそう思うのならそうかもしれないけれど、俺はそのワガママは、言って良いワガママだったと思うよ。」
「…そんなわけ、」
「だって、ご両親はそのワガママを叶えてあげたくて仕事を頑張ったわけだし、太一くんに喜んで欲しくて、帰りにケーキを買ったんでしょう?」
言っちゃダメなワガママなんかじゃなかったんだよ。太一くんのせいじゃない。って抱き締められたまま、穏やかな声色で頭を撫でられる。
俺、今まで自分のせいだって思って生きてきたけど、違ったのかな……二人に恨まれたりなんか、してないのかな……。
「太一くん、今年の誕生日はプレゼントをたくさん用意して、色んな所に行って、二人で楽しく過ごそう。あと、太一くんが良いのなら、まずご両親のお墓へご挨拶に行かないとね。」
俺に、大事な息子さんを下さい、って。
「おれっ、隆明さんがすきです…っ」
「うん。俺も太一くんを愛してるよ。」
その日、隆明さんは全身に甘くて優しいキスをくれた。これまでの孤独や不安を全て取り除くように、丁寧に丁寧に。
与えられる全ての感覚に素直に堕ちて、俺は何度達したかわからない。全身が性感帯になったように熱くて、気持ち良くて、堪らない夜だった。
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