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第68話

 ふと、朝食を食べながら隆明さんの家族のことが気になった。祖父の代から会社経営をしているとは言ってたけど、その他の事はあまり聞いていない。  なんだかそれって、不公平じゃないだろうか。  「隆明さんって、何人家族なんですか?」  「ん?どうしたの、急に?」  「だって、俺は昨日家族の事話しましたけど、隆明さんの家族の事はよく知らないから、」  素直に答えてくれなかった隆明さんに、ムッとして言うと、膨らんだ頬を指で潰された。  隆明さんの顔は、俺の気持ちとは反して楽しげだ。  「そうだね、うちは両親に弟が1人、妹が2人の6人家族だよ。」  「え!?4人兄弟で隆明さんが長男なんですか?」  「そうだよ。え、変かな?」  隆明さん、意外と抜けたところがあるから、しっかり者の長男像からは離れていると感じていた。  いやいや、そんな事よりも―  「長男だったら、あの…お家の事とか……」  「ああ、跡継ぎって事?それは心配ないよ。もう何年も前にゲイだってカミングアウトしてるから、期待はされてないよ。」  「あ、そうなんですか…」  「幸い、偏見はない人達だったから、筋肉隆々の男くさい人だけは止めてと言われたくらいで済んだよ。」  そうやって隆明さんは笑うけど、家族にカミングアウトだなんて、そう易易と出来る事でもないし、計り知れない覚悟だったんだろう。

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