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第70話

 「ごめんね、急ぐ事じゃなかったよね。太一くんの覚悟が出来たら言って。」  「あ…、」  きっと隆明さんは俺を気遣ってそう言ったんだろうと思う。頭ではわかってはいるけど、なんだか言葉の端に“突き放す”ような鋭さを感じてしまって、身体の芯から冷えていくような気がした。  「ほら、太一くんそろそろ着替えないと、遅刻するよ?」  「…はい、」  俺は先に出るね、行ってきます。と、通り過ぎざまにサラっと髪を撫でられた。  傷付けてしまったかも。面倒くさいと思われた?呆れられた?やっぱり、俺みたいな子供は、隆明さんには釣り合わないんじゃないだろうか。  考えたくもないけど、きっと歳も近くて仕事も出来て、隆明さんの欲しい言葉を素直に言ってあげられる、そんな大人の男のほうが、隆明さんには似合っていると思う。  「こんな俺が恋人だなんて、別れなさいって言われるにきまってるじゃん…隆明さんのバカっ……」  覚悟が出来たら―  いつ、出来るのかな、そんな覚悟なんて。

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