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第75話
「あら!あなたが隆明の恋人ね〜!」
「へ…!?」
玄関に一番近い扉からヒョコっと顔を出したのは、多分隆明さんのお母さんであろう女性。栗色の綺麗なショートヘアや、口角がツンと尖った唇がよく似ている。
「可愛らしい子ね〜!さぁ、そんなとこにいつまでも居ないで、早く上がって頂戴。今クッキー焼いてたところなの。食べるでしょう?」
「あっ、えっと、頂きます……」
隆明さんが俺の背に手を当て、早く靴を脱げと急かし、お母さんは俺の両手を握って早くと引っ張る。
ここへ来るまでに俺が想像していた出迎えとは真逆で、そのギャップに呆然とした。
これって、歓迎されてる…?
「それで、太一君はお幾つなの?お仕事は何されてるの?隆明とはどんな出会いだったの?」
「母さん、そんなに詰め寄ったら太一くんが怖がるだろう。ゆっくり聞いてあげてよ。」
「失礼ね。怖くないわよ。ね、太一君?」
俺はなんだか蚊帳の外って感じで居たんだけど、あまりにも歓迎ムードで接してくれるから、なんだから嬉しくて心がジーンとして目が潤んできた。
決してお母さんが怖かった訳じゃない。
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