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第76話

 「あらっやっぱり怖かったかしら?どうしましょう…」  「太一くん?大丈夫?」  涙こそ流れていないものの、涙目で困り顔の俺を前に、二人はアタフタと声をかけてくれる。  「違うんです。俺、嬉しくて…」  「嬉しい?この子ドMさんなのかしら?」  「母さん、太一くんに変なこと教えないで。」  なんだろ、浮気ってやっぱり俺の見間違いか、隆明さんの本意ではなかったんじゃないかな。腕を組んでたわけでも、恋人繋ぎをしていたわけでもない。単に急いでと手を引かれていただけだし、こんなに悲観的になることはなかったんじゃないかな。  「俺、隆明さんとお付き合いをしてる事、反対されるとばかり思ってたから……お母さんが優しくて、嬉しかったんです。」  「反対なんてしないわ。寧ろこんなにかわいい息子が増えるのなら大歓迎よ。」  胸が暖かくてたまらない。泣いたらまた困らせるってわかってるのに、今度は涙が流れて止まらない。  隆明さん、俺もう隆明さんと別れるなんて、考えられないよ……

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