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第78話

 「ややこしいな、アキ着替えて来なさい。」  「ごめんなさいねぇ、うちの子こんなのばかりで。」  「こんなのって!お母さん達のせいなんだから!」  「えぇ……全然整理できない…どういう事?」  アキと呼ばれた女の子は、実は男の子で、弟さんで……じゃあ昨夜見たのも弟さん?やっぱり浮気じゃなかった?  「でも、よかった。太一くん涙止まったね。」  「そうね!良かったわ、可愛い子を泣かすなんて、罪悪感で居た堪れないもの。」  そうだ、ビックリして気付いたら涙は止まっていた。  いや、ビックリって言うか、まだ頭の中が理解に追いついていないだけなんだけど。    「着替えたよー。それで、さっき泣いてたのは何があったの?やっぱり修羅場?」  「男の子、だ……」  ウィッグだったのだろう、軽く巻かれた茶色のロングへアは、黒髪のツーブロックに変わっていた。帰宅時に着ていた白ニットのワンピースとベージュのコートはカジュアルな部屋着に着替え、薄くしていた化粧も落として戻ってきたアキヤさん。  もうどこからどう見ても、普通の男の子だった。

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