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第89話

 「っう〜、やだったのにぃ…っ、隆明さっ、イジワルなのきらい…っ」  「そっか、ごめんね…」  テキパキとシーツや道具を片付ける隆明さんを泣きながら目で追う。苦しかったし、今も全身が重くて動けないし、酷いことをされたと思う。けど、俺が欲しいのは隆明さんの温もりで、早く頭を撫でて…早く抱き締めて…と言ってしまいそうになる。  「太一くん、身体拭くから仰向けになって。」  「……隆明さんの、良いの…?」  「ふふ、イジワルな俺の心配してくれるんだ?今日は太一くん疲れてるだろうし、明日もあるから。」  ほら、隆明さんはズルい……  疲れきって、少し姿勢を変えるのも辛い俺に、続きは今日は良いって。本当に冷酷な人なら、きっと俺の身体の事なんか心配しないし、俺が気を失ったって無理矢理シてるよ…。  「たかあきさん…、」  「なに?」  「も、あんなのヤダ……」  「じゃあ、今度からは素直に何でも言ってくれるね?」  「……いじわる…」  あんな、人間の恥の部分なんかさらけ出したくない。隆明さんには綺麗な俺しか見て欲しくない。失望されたくないし、嫌われたくない。隆明さんが好きな“かわいい”俺でいなきゃ、いつか愛想つかされて捨てられてしまう。

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