106 / 132
第90話
隆明さんはあんな事をした気まずさからか、布団に入ってもいつものように抱き締めてはくれない。申し訳程度に指を絡めるだけで、頭も撫でてくれないし、キスもない。
「太一くん、続きは明日って言ったけど、気にしなくて良いからね。次の日は仕事だし、もう無理はさせたくない。」
「……うん、」
「さっきのは無味無臭だから、それも…ね。俺は太一くんが他の人に見せた事のない一面が見られて嬉しかったし。」
うそだ、俺が隆明さんのそんな一面見られたら……少しは、嬉しいかもしれないけれど。エッチの最中にお漏らしなんて、あんなトラウマになりそうな快感を植え付けられて、これからする度に癖になってしまったらどうしてくれるの…?
「素直に言ってくれないとお仕置きって言ったけど、俺もキチンと話していなかったのも悪いし、明日はゆっくりお話してようか。」
「……うん…あのね、隆明さん……」
「うん?」
元々女の子が好きだったのを、マサに変えられてしまって。ノーマルプレイしかした事がなかったのに、それすらも隆明さんに変えられてしまった。今じゃ女の子を見ても、付き合いたいと思う事も無い。勿論、他の男の人なんか考えられない。俺は、もう隆明さんがいないと生きていけない。
「………ちゅう…して…?」
「え?……え?太一くん?」
「…だめ、?」
驚いた隆明さんに、戸惑いの眼差しで見つめられる。
隆明さんが“素直でかわいい”俺を好きなら、いつまでもツンツンしてないで、俺も殻を破らないといけない。恋人に甘えるなんて、今までした事がないからどうすれば良いのかわからないけど。
「おれ、ちゃんと素直になるから……ずっと、おれのこと、すきでいて?」
「…っ、はは、ヤバいな…もう酔いは覚めてるだろうに……素直に甘える太一くん、たまらなくかわいいよ。」
ともだちにシェアしよう!