111 / 132
第94話
「そうだ、明日の夜はプレゼントを用意しているから、お酒は控え目に頼むよ。潰れて渡せないとか、翌朝覚えてないとかはナシだからね。」
「えっ!プレゼントなんてあるんですかっ?てっきりこの旅行がそうだと……えへ、嬉しいですっ俺今日はお酒なくても酔えそうです、」
隆明さんが俺のことを考えて準備してくれたんだと思うだけで、簡単に直ってしまった俺の機嫌。単純にも程があるでしょ、俺。
繋がれた手の甲を隆明さんの親指が摩る。無意識の行動なのか、隆明さんは何も言わず真っ直ぐ運転に集中している。擽ったくてしかたないけど、何だか隆明さんが甘えてくれているような気がして、嬉しくなる。
今日からの3日間は、家に帰るまでお互いに甘えて甘えられて、たくさん恋人らしいことをしたい。
「ほぁ…す、っごい……隆明さんっここって庭園が見渡せるんですね!なんだか別世界に来たみたい……」
「予約出来て良かったよ。明日の夜は雪が降るみたいだし、また景色が変わるよ。」
「ゆき!雪降るんですかっ?」
俺たちは観光の前に、2泊する予定の旅館へ車と荷物を置くために、先にチェックインを済ませにきた。女将さんに案内された部屋は、畳の匂いのするどこか暖かい雰囲気の和室だった。外へと続く襖を開ければ、綺麗な緑が広がる庭園を見渡せる位置にあるようだった。
ともだちにシェアしよう!