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第97話

 「太一くん?」  「あ…へへ、隆明さんがかっこよくて、ちょっとだけ見蕩れてました。」  「ありがとう。今日の太一くんも、一段とかわいいよ。」  「んー、それ本当に褒めてます?」  「褒めてるよ。俺はかっこいい太一くんの、かわいい一面がたまらなく好きなんだよ。」  だめだ、隆明さんのこの甘い顔と声にはいつまで経っても慣れないだろう。真っ赤になってしまった俺の頬を、冷たい隆明さんの両手が包む。熱い頬にはそれがちょうど良くて、だんだん冷めていくのを感じながら、視線を落とした。  「隆明さん、顔、近いです……お昼食べに行くんですよね?行きましょう?」  「うん、でももう少し。外へ出たらあまり触れられないからね。」  「う……」  「っはは、また真っ赤になった。」  キスをしたり抱き締めあったり、少しの間スキンシップを楽しんでから旅館を出た。すれ違うお客さんや仲居さんに、俺達の関係がバレていないか少し気になったけど、地元から遠く離れたこの地に俺達を知る人はいないか、と肩の力を抜いて、少しだけ隆明さんの傍を歩いた。

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