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第98話

 「お蕎麦、とっても美味しかったですね。」  「店の雰囲気も良かった。家の近くにああいう店が欲しいね。」  「ですよね!あ〜、近くにあったら通うのに。」  ガイドブックに載っていた蕎麦屋で昼を済ませた後、遠くに見える山や特産物の並ぶお店やお土産屋を横目に、二人でしばらく歩いた。この土日でクリスマスデートをしに来たのか、カップルや家族が多く見える。俺達の関係は、どんな風に見えるんだろう。  「どこか急ぎて見たいところでも無ければ、今日は旅館へ戻るか?長時間車に乗っていたから疲れただろう、明日の為に体力を温存しておくのも大事だよ。」  「それを言うなら、隆明さんこそ長時間の運転で疲れたんじゃないですか?今日は旅館でゆっくりしましょう。露天風呂がすごいってガイドブックに書いてありましたよ。」  「そうだね、せっかくだから色んなお湯に浸かろう。」  乾いた空気も、周りからの視線も気にならなかった。俺達は指を絡め合い、旅館までの道をゆっくりと進んだ。ここには俺達を知る人は、居ないはずだった―  「太一……?」

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