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第100話

 「隆明さん、走らせちゃって、ごめんなさい…」  「それは全然良いんだけど……良かったの?ちゃんと話しなくて。」  「……、隆明さんは…周りの人に俺達のこと、バレても良いって、思ってますか?」  旅館の部屋へ戻ると、隆明さんは座り込んで動かない俺のスヌードやコートを壁に掛けてくれる。その間、俺は隆明さんの背中を見つめた。どこからどう見たって女の子には見えない。マサは、どんな思いで俺達に声を掛けたんだろう。  「俺はバレたって困ることはないけれど、無闇矢鱈に敵を増やす事は良いとは言えないね。相手に偏見が無ければ、隠す事でもないのかもしれないけど。」  「……俺、どうしたら良かったんだろ、」  「せっかくの遠出なのに、他の男のことを考えてるなんて楽しくないね。時間をあげるから、きちんと話しておいで。」  「でも……」  膝を抱えてうじうじと隅っこに座っていると、隆明さんに両脇に手を差し込まれて抱えられる。そのまま広縁の椅子へ座り、向かい合う形で膝に乗せられる。  隆明さん越しに見える景色が、旅行へ来てまで何をしているんだと咎められているように感じた。  いつかはバレた事だろうし、バレてしまったんだから今更逃げる事でもない。だけど、俺はまだ心の準備なんか出来ていなかったんだもん。

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