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第101話

 「俺はあの人の為に話しておいでって言ってるんじゃないよ。この3日間、太一くんには笑っていて欲しいから、俺と太一くんの為に、余計な事は片付けておいでって言ってるんだ。」  「うん……」  「それで友人関係が壊れるのならそれまでの人だし、そうじゃないなら最高の友人じゃないか。太一くんが責められるような事は何もしていない。好きだから一緒に居てくれてるんだろう?胸を張って話してくれば良いよ。」  隆明さんの胸に顔を押し付けて目を閉じると、トク、トク、と穏やかな鼓動が伝わってくる。背中をあやすように叩かれると、何も考えずに眠りたくなってしまう。  逃げてちゃ何も進まないってわかってるけど、今は逃げさせてくれないかなぁ。今マサと話したとして、何を言って何を言われるのか、怖くてたまらないよ……。  「さて、夕飯まではまだまだ時間があるから、一度露天風呂に入ろうか。良い景色に良い空気、きっと癒されると思うよ。」  「……ん、もう少し、ぎゅって、してて……」  「ふふ、はいはい。大きな赤ちゃんみたいだね。」  隆明さんが笑う度に揺れる体も、髪を遊ぶように触られるのも、隆明さんがくれる全ての感触が心地良い。マサは確かに大事な友人の一人だけど、どんなシチュエーションでも隆明さんとマサを並べられると、迷わず隆明さんを選ぶ。どちらも失いたくはないけれど、俺がこれからを共に歩んで行きたいのは隆明さんなんだから。  隆明さんの胸の中で、密かにマサへどう話すかを決めた。いい大人なんだ、今更逃げたっていつまでも逃げ切れないよね。

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