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第103話
「こんな感じ……かな、変じゃないですか?」
「良いと思うよ、話がしたいって伝われば良いんだし。」
露天風呂から上がって、気持ちをしっかり固めた俺は、早速マサへのメールを作成し始めた。
驚かせてごめんとか、嘘をつくつもりはなかったとか、普通じゃないから言えなかったとか。どんな言葉を選んでも言い訳がましく見えてしまって、結局送信したのは“ちゃんと話したいから明日の朝、時間を下さい”の一言だった。
「もし太一くんが泣いて帰ってきたら、精一杯甘やかしてあげるから、安心して行っておいで。」
「子供じゃないんですから…でも、もしかしたら本当に泣くかも……そしたら、プリンとホットココアを買って来てください。あと、隆明さんからのキスも…。」
「はぁ、もう、ほんとうに君は可愛いなぁ。もうどこへもやりたくない。今すぐ仕事を辞めて専業主夫にならないか?」
「ヤですよ、俺仕事好きなんで。」
「即答……」
風呂上がりの火照った肌が、隆明さんの冷たい手に冷やされて気持ちが良い。付き合いたてのカップルでもこんなにくっついていないだろう、というくらい四六時中くっついているけど、こんなの飽きる訳がない。
「専業主夫になるのはもう少し先が良いです。やっぱり誕生日やクリスマスのプレゼントなんかは自分で買いたいですから。」
「そうか、それもそうだね。」
早くマサと話をして、明日と明後日は心から隆明さんとの時間を楽しみたい。この何でもない会話も、隆明さんの一挙手一投足全てを。
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