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第105話

 「そうじゃねぇよ……」  「……え、?」  「いつからゲイなんだって聞いている。」  辛うじて聞こえるくらいの小声で零したかと思えば、今度は顔をあげて問いただすように言われる。そんな事を聞かれると思っていなかった俺は、身構えていた肩の力が少し抜けた。  「ん…そうだなぁ、少なくとも、マサに出会った時にはもう、そうだったんだと思う……」  「なんで隠してた!俺はそんな事一度も聞いてない!」  「だっ、だって、そんな事言えるわけがないだろう!」  デリカシーのない質問の内容もそうだけど、怒鳴り上げられると俺も対抗して叫んでしまう。ベンチから立ち上がってマサを見つめると、その顔はどこか寂しそうな、苦しそうな表情で、どう言えば良いのかもうわからなくなった。  「……俺、高校の時からマサが好きだったんだ。」  「……は?」  「ごめん、気持ち悪いよな、マサが結婚するまで、ずっと好きだった。落ち込んでた俺を救ってくれたのがあの人なんだ。」  「待てよ、お前が最近まで彼女作らなかったのは、色事に興味がないんじゃなくて、そういうこと、なのか……?」  「そうだよ、何年も好きだったんだ、」  俯いて何とか声を絞り出した。言うつもりはなかった気持ち。だけど、マサのあの表情を見てしまったら、今まで隠していた事全てを明かさなければならない気がした。

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