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Angel ー4ー

「さて、仕事に行きますか!! あ、そう言えば何か食べました?」 「いえ、何も………」 「そうですか、まぁ我々は食事を取らずとも死にはしませんがね、元々死んでますし。 ですが欲求は人と変わりませんので……… では仕事が終わりましたら何かご馳走しましょう。」 ここへ来てからはまだ何も口にしていない。 別に死なないのなら食べなくていい。 元々食べない日もあったのだから空腹なら空腹で構わないと思う。 そして早速天使としての初任務。 今回は浅倉の天使の仕事を拝見するだけで良いと言う。 「今日は大体の流れを覚えて貰います。 先ずはこの方、井上香代子さん87歳。 多臓器不全によりお亡くなりになられます。」 「はぁ……」 そう言って浅倉は颯真のアパートの室内で何やら手を合わせ何かを唱え始めた。 「(なんじ)、道を開き(たま)へ。 吐普加身依身多女(トホカミエミタメ)。」 すると下から光が現れ二人を覆い、光が消えるとそこは元いた場所とは別の場所だ。 「あの、ここは…… さっきの言葉って……」 「ああ、ここはこれからお亡くなりになる方のいる場所です。 ほらあそこ、もう風前の灯火の命が消えようとしています。」 浅倉が指をさしたところに目をやるとそこには 病院のベッドの上に酸素マスクをつけた老婆と それを囲む沢山の家族の姿がある。 「それと、吐普加身依身多女(トホカミエミタメ)。 これは祓い清める、遠つ神、恵み賜へ の意を持つ言霊です。 死者と会うとき穢れた心身を清めるのです。 この言霊には強力な力があります。 ですから以後お忘れなきようお願いします。」 「わかりました。」

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