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第138話

「あっ、すみません。お邪魔しました」 何とか声を出し俺は直ぐにその場を立ち去り、フラフラした足取りで席に戻った。 「あらぁ、お帰りなさい。早かったのね。トイレ混んでたの?」 百合さんが何か言ってるけどボ-とし、さっき見た事が信じられず酔ってるのかと頬を両手で軽く叩く。 「イタッ」 「何、やってるの?んもう、可愛いんだから。ほら、おしぼりで拭いてあげる」 百合さんが俺の頬におしぼりを当てて冷やしてくれていたのも気付かず、俺はさっき見た事が現実だと一気に酔いが覚めた。 キスしようとしてた?この後どこかに行くって言って無かった? 伊織さんがあのキャバ嬢とどこかに行く姿を見たくないと思って、俺は伊織さんが戻って来るまでに店を出る事にした。 百合さんに断って、田口さんの耳元で話す。 「すみません。少し酔ったようですから、タクシ-で帰ります。先に失礼します」 「そうみたいだな。ま、慣れない所に来たからだと思うが。課長が送るって言ってたぞ」 さっき見た事を考え送るわけ無いと思い。 「まだ、1人で帰れますから、皆さんはゆっくりして下さい。俺は大丈夫です」 「おい、香坂」 田口さんが声を掛けてたけど、早口で言いお金を置いて、伊織さんが戻る前に急いで店を出た。 「あらぁ、見られちゃったわねぇ~。部下の人に見られたらマズかったぁ?」 まだ、首に回した体勢でグイグイ体を押し付けてくるが、ミキに見られ誤解されるんじゃ無いかと直ぐ追いかけたかったが、このキャバ嬢を何とかしないと追いかけられ無い。 首に回した手を解き少し距離を置いて、困った顔をワザとする。 「まあ、部下に見られたのはマズイな。上司が女癖悪いと思われる。それに、ここには他の部下の知り合いの店で顔を立てる為に来た。変な事は出来ないな。アフタ-何て以ての外だ」 俺の胸に手を当て、しな垂れ掛かってきた。 距離を置いてもシツコイ。 「じゃあ、今日は止めておくから。また、お店来てね。これ私の名刺だから」 ポケットに名刺を入れ、やっと離れてくれた。 キャバ嬢のセ-ルスト-クだと思うが話しを合わせて置く。 「解った。解った」 手を振り、ミキがいる席に足早に戻りながら、これで何とかあのキャバ嬢もアフタ-の件も納得し、俺とミキの関係も部下と上司だと思っただろう。 その為に追いかけたいのを我慢したんだ、全てミキの為だ。 席に戻りミキの居た場所を見ると姿が見当たらない、先に戻って居たはずと考え田口に聞く。 「田口、香坂は?」 「あっ、香坂、さっき帰りましたよ」 「はっ、酔っているようだから送ると言ったはずだが」 田口に言っておいたのに、なぜ?1人で帰らせたと言う風に話す。 「はあ、すみません。香坂にも課長が送ると言ったんですが1人で大丈夫って、タクシ-拾って帰るからって」 1人で何も言わず勝手に帰ったミキにも腹が立ち田口の返答に冷静になれと心で言い、表向きは平静を装って 「そうか、大丈夫なら良いがまだ帰ったばかりだな。一応、さっきの様子だと心配だし俺も帰ろうと思ってた所だから、店出てまだそこら辺にいるようならタクシー拾って一緒に帰るとする。田口達は程々に楽しんで気を付けて帰れよ。佐藤の事頼むな」 田口に話てる間に美優が戻って来たが、途中で黒服の男に他の席に着くように言われのか、他の席に行ったのをチラッと確認しホっとして、田口に多めに金を渡し気が急いてるが平静を装いながら店の外に出た。

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