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第155話
アメリカ支社から個々の売上状況の数字とグラフをパソコン画面で見て、10月発売のト-トバック関係はまだそれ程売上は上がって無い。
これからだと画面を見て思案する。
その状況が続いて、皆んなも気落ち仕掛けていた所に、思いも掛け無い急展開が起きた。
それはアメリカで人気のモデルとバンドマンが手繋ぎデ-トをしてる所を、パパラッチに撮られ雑誌やテレビ、ネットに掲載され、その時、運良く人気モデルが、例のト-トバックを持っていたのが10代.20代の女性から「可愛い」と評判になり、売上が一気に伸びた。
そのモデルは元々センスの良さが評判の女性だったから、私服も注目されていた。
人気モデルとバンドマンの話題が、メディアに載る度に何もしないでいても、ト-トバックは宣伝されているようなものだった。
それに頼るだけでは無く、こちら側からも雑誌やネットに使い方等を、事細かく宣伝したのも効果が現れてきていた。
アメリカ支社からはどんどん商品を送って欲しいと連絡あり、工場では大忙しで対応していた。
何となく気落ちしていた課の雰囲気も俄然、士気も上がり、また盛り上がりを見せてきた。
「売上も上々だ。このままクリスマスシ-ズンまで持っていき流行りで、終わらないようにしよう。在庫は切らさない様に注意してマメに連絡して置く事」
「「「はい」」」
俺は課の雰囲気が良くなっているこの時に、敢えて浮かれて過ぎ無い様に注意もし、やる気も促した。
皆んなが気を引き締めたのを確認し、思いがけ無かった事で注目されたが、いずれは売れると思っていたから想定内だったが、一先ずホッとした。
ト-トバックが売れるとサンダルも付属で買い求めてくる人も多くなり、順調に売上も伸びていた。
仕事面もプライベートも順調で毎日が充実していた。
そんな11月も半ばに専務が1課に珍しく顔を出した。
「成宮課長、頑張ってるようだね」
「神崎専務、ありがとうございます。転勤して来てご挨拶した以来で、ご無沙汰しております」
「気にしなくていい。それよりも昼、一緒にどうかね」
「はい。行かせて頂きます」
田口に「専務と昼飯を外で食べるから席外す」と話し会社の外に出る。
昼休憩を過ぎて神崎専務と分かれ課に戻る。
「悪かった。休憩時間過ぎた、何か連絡等は?」
「特にありません。神崎専務が来るなんて珍しいですね。いつも役員室にいて滅多に会わない人なんで緊張します」
田口が言うのも解り
「そうだな。俺は、昔、お世話になった人だからな。よし、仕事するか」
自席に座り仕事を再開した。
田口は神崎専務の事、俺が若い時の上司かそんな風に思ったようだが、それは勘違いでプライベートでお世話になった人だ。
会社では殆ど会わないから、何かあるのか?と疑い昼休憩を一緒に過ごし世間話をしていたが、昼休憩間際に頼まれ事をされた。
なぜ俺が?と思うと同時に、昔の事もあり断り切れないと判断した。
パソコン画面をみながら
「面倒だな」
小さく呟く。
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