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第157話
「ふあ~、いい匂いだなぁ。おはよう、ミキ」
欠伸をして起き出した伊織さんが俺の側に寄り唇に、おはようのキスをした。
「おはようございます。今、起こそうと思ってたので丁度良かった。朝食、出来た所です」
「美味そうだな。頂きます」
簡単な朝食でも美味しそうに食べてる姿を見てるだけで嬉しくなる。
「頂きます」
食パンを頬張りながら
「あっ、そうだミキ。今日、昼前にちょっと外出する。昼は悪いが食べてくる」
一緒に過ごせると思っていただけに、残念に感じた。
「解りました。じゃあ、俺、自分の所に帰りますね」
伊織さんが居ないのに勝手に部屋には居られないと思って話す。
「何か用事でもあるのか?」
「いえ、用事はありません。伊織さんが居ないのに勝手には居られないですよ」
「用事が無いなら居てくれ。暇ならDVD見て居てもいいし、アクセサリ-製作しててもいいし。取り敢えず、帰るなよ」
「……居て良いんですか?」
「当たり前だろ。どうせ、明日も会うんだ。成る可く、早く帰るつもりだが……相手次第だな」
「昨日、会った人ですか?」
女の人?誰?どんな関係?聞きたい事は沢山あったけど、そういう風に聞くのが精一杯だった。
「ああ、昔の知り合いだ。そうだな、夕飯は一緒に食べられるから、ミキ何か作ってくれ」
「何が良いですか?」
夕飯頃には帰って来れると知り、一緒に食べれると嬉しくなり、色々聞きたかった事も飛んで行った。
「和食だな。帰る前にLINEするから」
「はい」
それから、数時間は2人でまったりと過ごし、伊織さんが出掛ける用意を始めると不安がフツフツと沸き起こり始めたが、何も言わない伊織さん。
普段通りで、こちらからは聞けない。
「伊織さん、ス-ツで行くんですか?」
休日なのに、やはり仕事関係?
「ああ、ちょっとラフな格好では行けないからな。相手に失礼だから」
「大変ですね。お風呂も沸かして置きますね」
「ありがとう。出来た奥さんで助かる」
そんな中、伊織さんのスマホが鳴る。
「xxxxxxx……解った。直ぐ行く」
良く聞こえ無かったが、どうやら出掛ける時間らしい
「ミキ、行ってくる。LINEするから」
「はい、行ってらしゃい」
伊織さんにチュッとキスすると、俺の頭をぽんぽんして
「何か、良いなぁ。ミキに見送られるの」
「早く行かないと」
玄関先でイチャイチャして、照れて急かす。
「あっ、そうだった。行きたく無くなるけど仕方ない。行ってくる」
玄関のドアを開け出掛けてしまった。
暫く玄関ドアを見詰め、溜め息をつきリビングに戻る。
コ-ヒ-カップを片付けようとした時、テ-ブルの上に伊織さんの鍵が置いてあったのを見付けた。
「忘れ物?でも、今日、俺がいるから置いて行ったのかな?でも、一応、持って行ってあげよう」
今から追いかければ間に合うと伊織さんの鍵を持って部屋を出て、追いかけた。
「はぁはぁはぁ……伊織さん。いない?」
辺りを見回し、エントランスから外を遠目で見る。
「あっ、いた。いお……」
声を掛けようとして止めた。
伊織さんの前に1台の車が停まり、それに乗り込んむ所だったからだ。
伊織さんを乗せたワインレッドの車が走り去って行った。
「昨日の人?やはり女の人だ」
遠目からだったが綺麗な感じの人?
休日にわざわざス-ツ着て会わなきゃいけない人なのか?なぜ?
頭は何も解らず混乱する。
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