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第158話
伊織さんの合鍵を握り締め、部屋にトボトボ帰り、ソファに座り混乱している頭を整理しようとするけど、何が起きてるのか解らずモヤモヤしている。
暫くボ-としてたのか?考えていたのか?それすら解らず、どうにもならないと気分を変える為に、部屋の掃除をし夕飯の買い物に出かけた。
昼は簡単に済まし、時間があるから考えるんだとアクセサリ-製作に集中する事にした。
「ふあぁ、疲れたぁ」
時計を見るともう、夕方だった。
「そろそろ、伊織さん帰って来るかも、夕飯の支度をしよう」
いつ帰って来ても良いように、お風呂も沸かし夕飯の準備に入る。
1時間程して夕飯も出来上がり、何もする事が無くなるとまた、ワインレッドの車が気になり始めた。
あの車の人と一緒だよね?女の人だったはず。
何の用事?昔の知り合いって言ってたけど……高校は男子校だから大学?
サラッと伊織さんに聞けば良いんだよね、でも、伊織さんが言わないのは何かあるのかなぁ?聞いちゃいけない事なのかも………。
考え事していた時
♪♪♪♪ピンポン.ピンポン
「伊織さんだ」
玄関まで迎えに行きドアを開ける。
「お帰りなさい」
「ただいま」
チュッ、俺の唇に軽くキスをくれた。
「俺、鍵忘れたみたいで焦った。ミキがいてくれて良かった。LINEしたけど気づかなかったか?」
「ごめんなさい。スマホ見てなかった」
「おっ、良い匂いがする。家に帰ってミキに出迎えて貰って、飯が出来てるっていいな。ありがとう、ミキ」
抱きしめて額にキスされた。
俺も不安な気持ちがあったから、ギュッと抱ついた。
顔を上げて「お風呂沸いてますよ。お風呂に先に入って下さい。その間に、食事の用意して置きます」
「ん…そうするか。疲れたぁ」
着替えの為に寝室に行く伊織さんを見詰め。
玄関先でキスされた時、リビングに行く為に通り過ぎた時、抱きしめられた時に昨日の香水の匂いがまたした。
やはり、昨日の人と一緒だったんだ。
でも、帰って来た伊織さんはいつも通りで変な所は無い。
何も解らない今、俺もいつも通りで居ようと考え、夕飯の準備を始めた。
「ああ、気持ち良かったぁ。美味そう、直ぐ食べられるか?」
「はい」
テ-ブルに着き肉じゃがを口に入れ
「ん、美味い。味も沁みてて、じゃが芋もホクホクだ。やっぱりミキの料理が1番だ」
本当に美味しそうに食べてくれる伊織さんの姿が凄く嬉しかった。
「お昼ご飯は何食べたんですか?」
「ホテルでフレンチだったから、堅苦しくって疲れた。気を遣ってくれたんだろうけどな。おっ、魚の煮付けかぁ。美味そう」
ホテルのフレンチ?何か形式張ってるけど、何の為の食事なんだろう。
「キ…ミキ。おい、何度も呼んでるのに…どうした?ボ-として」
考え事してたから呼ばれたのに、気付か無かった。
止め、止め、今は2人で居るんだから、考えるのは止めよう。
「ごめんなさい。いいなぁと思って、フレンチ」
「そうか?ミキの料理の方が断然いいが、ミキが行きたいならいつでも連れて行くぞ」
「その内お願いしますね」
「いつでも言え。ミキとなら堅苦しくも感じ無いだろうし」
今日の相手は伊織さんも気を遣う人って事?また、考え出すのを頭を振って止めた。
「伊織さん、このきゅうりの和え物食べてみて、上手く出来たと思うから」
「どれどれ。おっ、美味い。胡麻油が効いてて美味い」
成る可く、普段通りに振舞い食事をした。
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