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第169話
「緊張するぅ。伊織さん、どこか変じゃ無いですか?大丈夫?」
もう、朝から何回めかの質問をしている。
相当、緊張してるらしい。
「どこも変じゃ無い。いつも綺麗で美人だ」
電車の中で耳元に囁く。
本当に、絶世の美人って言う感じだ。
家では前髪をヘアピンで留めてるのも結ってるのも可愛いし、会社以外ではナチュラルに前髪を流し毛先を遊ばせているのも綺麗だが、今日は気合を入れたのか?前髪を綺麗に流し全体的にワックスで毛先を遊ばせていてとても似合ってる。
服装もパステルグリーンの薄手の大きめのセーターをざっくり着て黒のスキニーパンツに合わせて中性的で華やかなミキにとても似合っていた。
空いている胸元から、色違いのネックレスが見え隠れして、今日は細めのチェーンのブレスレッドもしていてお洒落だ。
その証拠に電車の中では、ミキを見てヒソヒソ話してる者や見惚れてる者もいる。
だから、タクシーにしようって言ったんだ。
沙織のLINEに飲みたいから、電車かタクシーで来てねってあったからだ。
ミキは勿体無いと言って、電車で行くと言い張るし、俺はこういう展開になる事は目に見えていたが、ミキは緊張してるのか?回りまで見えて無いらしい、妥協案で帰りはタクシーにすることにしていた。
できれば誰にも見せたく無い、今日はいつもより威嚇し警戒していた。
「中華って、言ってましたよね」
「ああ、ホテルのレストランだと堅苦しいし、話もゆっくり出来ないからって。沙織の知り合いの店で、個室ありの所らしい」
「沙織さんと恋人の方も、いらっしゃるんですよね」
「ああ。1度会ったが、若いが中々の好青年でしっかりしていた」
「俺と同じ位の歳ですよね。伊織さんにそんな風に言わせるなんて凄いですね。何か、あ~、また緊張してきた~」
そんな会話を楽しんで、沙織の指定した店に向かった
個室のドアを開けると先に沙織達は着いていた。
「悪い。待ったか?」
「今、来た所だから。それより早く会わせてよぉ。凄く楽しみにしてたんだから。ね、大ちゃん」
「先日はありがとうございます。今日はすみません」
「こちらこそ、この間はご馳走さま」
3人の会話を聞いてドキドキしてきて、まだ顔を出せずにいた。
伊織さんの後ろにいた俺の腕を引いて、横に並ばせ紹介してくれた。
「俺の恋人の、香坂美樹だ」
「香坂美樹(こうさかよしき)です。よろしくお願いします」
頭をペコッと下げて顔を上げる。
暫くの沈黙の後
「ねぇねえ、大ちゃん。私、こんな綺麗な人、見たこと無いわ。伊織が惚気るだけあるわね。や~ん、目の保養になるわ」
「沙織さん、興奮し過ぎですよ。でも、気持ち解りますよ」
「?」
良く解らないが取り敢えず、大丈夫みたいだとホッとした。
俺の頬に手で触れて興奮して話す沙織さん。
「凄くきめ細かくって、白い肌で羨ましい」
「触るな!」
横から声がして、沙織さんの手を掴んで離す伊織さん
「ん、もう、ケチ。見る位いいでしょ?」
「見るな!それより自己紹介しろ。ミキが驚いてる」
「あっ、ごめんなさい。私ったら興奮しちゃって。改めて、神崎詩織です。神崎専務の娘です。こちらがお付き合いしてる矢島大輔君」
「矢島大輔です。沙織さんとは大学で知り合いましたこの間は成宮さんにお世話になりました」
「よろしくお願いします」
「ねぇ、自己紹介も終わったし、食事しながらお話しない?」
前以て、料理と酒は注文してたらしく直ぐに出された
乾杯し料理を堪能し酒も少し入り
「まつ毛長い」「目が二重で綺麗」「髪、ふわふわ。少し茶色がかってるのね」「お人形みたい」
沙織はミキを絶賛し話すがミキは謙遜し「クォ-タ-だから」「生まれつきです」一生懸命に応えてる。
「おい、ミキが困ってる。いい加減に止めろ!」
「伊織が羨ましい。いつも一緒に居られるなんて」
さっきから、沙織さんが話す伊織って呼び捨てにピクッと反応してしまう、それに気付いたのか。
「ごめんね。伊織の事、今更、成宮さんとか伊織さんとかは気持ち悪くって言えないわ。もう、小さい頃から伊織だったから許してね。ミキってニックネ-ム?可愛いわね」
「漢字で美しい樹木の樹って書いてヨシキって読むんですが、家族や親しい人だけミキって呼びます」
「え~、いいなぁ。私も呼びたい」
話を聞いていた伊織さんが恐い顔をして話す。
「だめだ! 呼ばせない」
「解ったわよ、ケチッ。じゃあ、ヨシキ君?呼び難いからヨシ君だったらいい?」
「それなら、良い」
俺が返事をする前に伊織さんが話す。
「伊織の許可貰ったからね。ヨシ君」
「はい。俺は沙織さんって呼んでいいですか?」
ヨシ君って大将と一緒の呼び方だと思うと、嬉しくなり微笑んで話す。
「きゃあ~、綺麗なのに笑うと可愛い~。大ちゃん、見た?見た?もう、ずっと見ていたい~。私の事は好きに呼んでいいわよ」
「沙織さん、見ました。凄く可愛いかったのは解りますが興奮し過ぎで若干、ヨシ君が引き気味ですよ」
「そうね。ヨシ君と仲良くなりたいから気をつけないと……」
やはりこうなると思っていた俺のイヤな予感は当たった。
沙織がミキを絶対に気に入ると思った。
「だから、会わせたく無かったんだ」
小声で呟く。
沙織は昔から、綺麗な物や可愛い物が大好きだ。
それこそ、小さい頃はリカちゃん人形が大好きで、良く付き合わされたのを思い出した。
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